9.ステップアップ
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 さて、ここまで来たら、脱初心者です。ていうか、すでに初めての望遠鏡選びとか関係ない流れになってきています。

 1人で望遠鏡を覗いてると、ほとんど自覚する事はありませんが、星見会や観望会などの、いろんな人がいろんな望遠鏡を持ち寄ってくる場に立ち会って、そして覗かせてもらうと、デ・カルチャな衝撃を受ける事が、よくあります。
 衝撃だらけかもしれません。
 そして、深みにハマったり、道を踏み外したりします。
 大丈夫、みんなそうです。うちもそうです。気にしないで下さい。

 ひとまず、ここでは、”初めての望遠鏡”は、経緯台式の屈折望遠鏡を選びました。
 ステップアップには、通常ルートであれば、架台に赤道儀を買って、鏡筒はそのまま、とか、まとめて反射赤道儀セット、とかになるんですが、微妙に通常ではないルートも存在します。
 かと言って、別に異常なルートという訳では(多分)ないので安心して下さい。

●大口径に走る
 何かの拍子に、この方向に走る人は多いです。
 よくあるのは、「写真じゃないと見えないと思ってた星雲をナマで見てしまった」といった時でしょうか。デ・カルチャです。
 幸いというか、この場合は星雲星団が対象になる事が多いので、高倍率にはあまり興味が無く、そのおかげで、「ドブソニアン」と呼ばれる簡易な架台を用いた大口径のニュートン式反射望遠鏡に進む場合が多いです。架台が非常に簡易な設計なので、大口径にもかかわらず、それほど高額でもありません。(高額なのもありますが)
 中級クラスで扱いやすいのは、口径25cmあたりまでです。口径30cmを越えるあたりから、体力や金銭力に覚悟が必要になってきますが、話によると、ここを越えたあたりから見える世界も変わるそうです。

●双眼に走る
 何かの拍子に、この方向に走る人も少なくありません。
 よくあるのは、「写真じゃないと見えないと思ってた星雲をナマで見てしまった」といった時でしょうか。またですか。
 これは体験してみないと実感は湧かないらしいですが、かなりの精神的ショックも受けるらしいです。「こんなすごいものがあったのか」というのと、「今まで使ってた望遠鏡って一体…」というショックみたいです。
 双眼といえば、まぁ普通は双眼鏡を思い浮かべますが、その巨大版である大型の対空双眼鏡の方に行く場合と、純粋な天体望遠鏡を2本並べて双眼に改造する方に行く場合があります。
 希に、「大口径」で「双眼」に走る人も出現します。想像しにくいですが、ちゃんと実在はします。
 通常の望遠鏡が片目で覗くのに対して、双眼は、その名の通り両目で覗きます。両目で天体を見るというのは、想像以上にインパクトがある物です。宇宙が立体的に見える錯覚を本当に起こします。
 ちなみに、これの簡易版として、1本の望遠鏡を両目で覗けるようにする、双眼装置という物もあります。(もちろんアイピースは2本必要です。)

●写真に走る
 いつの間にか写真がメインになっていた、という人が多い様です。
 見た物を写真で残せるという満足感を得るタイプと、目では見えない物でも写真なら見えるという欲求から来るタイプに分かれる様ですが、境目はかなり曖昧です。途中で趣旨変えをする人もいますし、定期的に入れ替わる人もいます。
 いわゆるデジカメや銀塩写真ではなく、天体専用の冷却CCDとパソコンを使って撮影をする場合も多いですが、写真を撮ることを優先するあまり、閑静な場所で深夜に発電機を回したり、無駄に明るい照明を自分の都合だけで点けたり消したりするので、他の星見人から害虫の様に嫌われている人も希にいます。
 気を付けましょう。

●太陽に走る
 今までは、普段使っている機材に太陽投影板や蒸着減光フィルターなどを付けて、黒点や白斑などの観測を行う程度でしたが、最近は太陽用のHα干渉フィルタが個人でも入手できる様になって、プロミネンスの直接観測も可能になりました。
 このあたりから、急速に太陽観測派が増えてきました。
 この専用フィルタや、フィルタを組み込んだ専用の望遠鏡はけっこう高価ですが、それでも月や土星・木星なんかとは比較にならないスペクタクルな光景がリアルタイムで観測できるとあって、実際に覗いた人が伝染病的にハマっていく、という状況です。
 夜間ではなく昼間の観測なので、寝不足になったり冬に凍え死んだりする事はありませんが、夏には熱射病で倒れる勢いです。

●自作に走る
 多数派では無いとは思いますが、それほど少数派でもない様で、いまひとつ実態が掴みにくいタイプです。普段は普通に星を見てるだけなのに、家ではいろいろと自作してる、という人もいます。
 最近は望遠鏡を作るための光学部材や鏡筒の素材、自作に用いる工具なども容易に手に入る様になって、あまり難しい部分は無くなりました。ネットでの情報交換も意外に盛んです。
 自作まではいかないけど、改造に走って、挙げ句に原型をとどめない望遠鏡にしてしまう人もいます。

●気象に走る
 本来は天文も気象も、同じ地学に分類されるんで、気象に走る事は珍しくはないかもしれません。
 星見の際に晴れるかどうか、気流は安定してるか、湿度は、という星見における実益から気象の方の知識を増やす人もいれば、夏の積乱雲やかなとこ雲、台風やスーパーセル、竜巻といった気象現象を、「木星の表面を観察するより面白い」と感じて趣旨変えする人もいます。雷の写真を芸術と捉えて活動してる人もいます。往々にして災害系のものに惹かれる様です。
 また、天文寄りでは、宇宙線と雷の経路の関係の研究や、雷とスプライト現象、太陽活動と電磁気による環境への影響、流星痕と高層大気、といった分野は実際にあります。
 気象は案外深いです。

●ボランティアに走る
 自分で星を見る事より、人に星を見せる事の方が面白い、という人です。
 小学校などに出向いて一般の人たちに星を見せる人と、観望会に出向いてマニアの人たちに星を見せる人に大別される様ですが、後者の場合は、前述の大口径・双眼・自作の方に主に分類されてしまうでしょう。
 星を見せるという事自体というより、人が星を見て喜ぶのを見るのが楽しい、と言った方がいいかもしれません。
 時々、知識自慢とかするタイプの人もいます。程々にしましょう。

●環境保護に走る
 星見に邪魔なもの、として真っ先に思い浮かぶのは余計な街明かり=光害ですが、そこからCO2がどうとか化石燃料がどうとかになって、そこから更に農薬がどうとか野生動物がどうとかいう方向に進んじゃう人も、いなくはないです。
 相当少数派だとはおもいますが。
 うかつに進化して環境保護テロリストにでもならなければ、まぁ環境にやさしい人、という事で落ち着くと思います。

●オタク文化に走る
 普通は逆のような気もしますが。
 NASAがスペースシャトルのテスト機に「エンタープライズ」と名付けたのも、アメリカのスタートレックオタクの誓願の結果です。「アトランティス」という名も、そのまんまアトランティス大陸から来ています。
 スターウォーズ好きが高じてNASAに入った人もいれば、ガン○ムマク○ス好きが高じてJAXAに入った人もいるかもしれません。ていうか絶対います。(マ○ロスは自衛隊?)
 星好きにはオタクが多いです。そのうち、メイド観望会が開かれたり、天文台のメイドデーなどができるかもしれません。何を見に行くのかは曖昧っぽいですが。

●SFに走る
 オタク文化に走るのとどう違うんだ、という話もありますが、どちらかいえば、「それまでもSFは好きだったけど、天文知識が増えてきたら、今までに観たり読んだりしていたSFの解釈が一変した!」という感じでしょうか。
 それまでは、ただの”面白い奇想天外なフィクション”だと思っていたものが、実はしっかりした科学考証の元にあるものすごいリアルな設定だった、という事もあれば、逆に、それまでリアルだと感心していたものが、かなりいいかげんな想像の産物だと判明して絶望した!という事もあるでしょう。
 前者の代表格は、やはり「2001年宇宙の旅」でしょう。後者だと「スターウォーズ」だったり「トップをねらえ!」だったりかもしれません。
 「宙のまにまに」から引用するなら、”言葉の星が見える”と言うか、ストーリーの中にある科学考証が、天文知識を深めるごとに、伏線を回収するようにどんどん理解できる様になってきて、ストーリーを更に深く楽しめるようになってきます。
 そして、どつぼにはまります。

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