番外1.初めての天体望遠鏡操作と初めての観測
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 天体望遠鏡を買いました。買ってしまいました。目の前に天体望遠鏡があります。
 ひとまず、おめでとうございます。

 それでは、基本的な取り扱いと操作方法だけは説明しておきましょう。
 あくまでも、このページは番外です。操作方法を文字で説明して、それだけで全ての人が理解できれば、きっと苦労はしないでしょう。スポーツと同じで、とりあえずの理屈とルールだけ憶えて、後はカラダで理解してもらうしかありません。
 尚、「説明書の通りにやってる筈なんだけど、スムーズに動かないし、星に向けるのも、ピント合わせもままならない」という悩みでこのページにアクセスしてきた人で、その望遠鏡がケンコー、レイメイ藤井、ナシカはじめ、ディスカウント店(オークション含む)経由の化粧箱入り中国製望遠鏡の場合は諦めて下さい。まずやるべき事は、なんとか上達を目指す事ではなく、すぐにでもその使い物にならない望遠鏡を返品するか使うのを諦めて、まともな望遠鏡に買い換える事です。

1.組み立てる
 天体望遠鏡を組み立てます。
 まず組み立てるのは当然ですが、時々、とんでもない組み立て方をする人がいます。
 星や望遠鏡に全く興味も知識も無いなら無理無いかもしれませんが、某出版社の中学理科の教科書に、ファインダーを逆に付けた天体望遠鏡の写真が載っていた事もありました。誰か気付けよ!と言いたい所ですが、案外、慣れないうちはパズル感覚で変な組み立て方をしてしまう物です。オークションでも、望遠鏡の知識が全く無いリサイクルショップなどが反射望遠鏡を出品して、前後逆に組み立てた写真を添える、というのもよく見られる微笑ましい光景です。ディスカウントで売られている、経緯台に対して鏡筒を前後逆に取り付けられている、どう見ても上に向けられない倍率700倍の反射望遠鏡のカタログ写真、というのはさすがに論外ですが。
 普通の初心者もターゲットにしている望遠鏡なら、組み立て方を図解で示した説明書が付いてる筈です。勘に頼らず、説明書を読みながら組み立てましょう。(マニア向けには説明書はほとんど付いてません)
 よほどの事が無い限り、力ずくで組み付ける様な部分は無い筈です。よほどの事がある場合、組み立て間違いか、あるいは不良品である確率が高いです。無理せず、もう一度説明書をよーく見て、何か間違ってないか確認しましょう。
 よく、何かを組み立てると、必ず部品が余ってしまう、という人がいますが、頼むから勘で組み立てずに説明書を読んで下さい。
 説明書を読んでもまだいまいちわからない、人から譲ってもらった物なので説明書が無い、なんて場合には、ビクセンの動画マニュアルを参考にしてみて下さい。

2.各部のチェックと増し締め、バランス調整
 天体望遠鏡に限らず、自転車でもホームセンターのお客さまお持ち帰り組み立ての棚でも、一旦組み立てたら、各部をチェックします。だいたい、どこかに「組み立てたはいいけど、締めるのを忘れてた」ってネジやボルトがあります。
 天体望遠鏡でありがちなのは、三脚・架台です。三脚を立てて、ひねるようにしてみて、グラグラする様なら、どこかに締めていない部分があるか、増し締めが必要な部分がある証拠です。
 たまに、鏡筒バンドのネジを締め忘れてて、鏡筒を落っことしちゃう人もいます。シャレにならないので、一通り、ぐるっと点検しましょう。
 変な箇所が無ければ、鏡筒のバランスを確認してみます。
 経緯台なら鏡筒前後(上下)、赤道儀なら鏡筒前後(赤緯軸)とバランスウェイト(赤経軸)で、クランプを緩めても勝手に動かないように調整します。調整できない構造のものや、調整できてるのかできてないのかわからない動きの渋いものもありますが、それはそれとして。
 本当はファインダーやアイピース類を取り付けて、更にピントがある程度合ってる状態でないと本当のバランスは取れないんですが、最初のうちは、組立の最初の段階でやった方が逆に失敗が少ないでしょう。組立と調整に慣れてきたら、ファインダーやアイピースを取り付けてからバランスを取ってみましょう。
 バランスが取れた状態なら、架台の動きもスムーズで、かつ内部のギアの摩耗も少なく抑えられます。
 写真撮影などの場合、あえてバランスを少しずらして調整する事で、架台のガタを片方向に寄せてしまう、という事もありますが、これはどちらかといえば特殊な例なので、最初のうちは考える必要はありません。

3.ピントの調整をする
 まずは、低倍率用のアイピースを取り付けて、どこか地上物を見てみましょう。天体望遠鏡なので、数100m以上離れたビルの上の看板とかがいいです。
 実は、このピント合わせがうまくできない人がいます。人ごとではありませんよ。
 ピント合わせは意外にデリケートな作業です。慌てず、慎重に、力をかけずにピントノブを回していきます。水道の蛇口のようにキュッキュッキュッ、と回すのではなく、1回1〜3秒くらいかけて、ジワ〜、ジワ〜、と回します。(慣れてくれば自然に早くなります)
 多くの「カンペキ初心者」が最初に戸惑うのが、このピント合わせです。双眼鏡ではピントが合わせられるのに天体望遠鏡ではピントが合わせられない、という謎のハードルの原因の一つは「いきなり高倍率を使おうとする」、もう一つは「いきなり星を見ようとする」です。まずは、「一番低い倍率で」「昼間の地上物を」覗いて、ピント合わせの練習をして下さい。(天体望遠鏡は何が何でも高倍率を出さないといけない、と思い込んでる時点で間違いです。)
 天頂プリズムを付けた状態とつけてない状態ではピント位置も変わりますし、アイピースの交換でも微妙にピント位置は変わります。ただ、ここで感覚を掴んでおけば、「天頂プリズム付きなら、ドローチューブをこのくらい伸ばしたあたりでピントが合う頃だ」という、だいたいの感覚は掴めてくる筈です。
 だんだんピントが合ってきて、ピタっとピントがあったら、あえて、更に回してピント調整が行きすぎた状態も確認してみましょう。上達してくると、このボケ方で、前と後ろ、どっちに回せばいいのか、わかる様になってきます。
 ピントが合ったら、次はもう少し倍率の高めのアイピースに交換して、やってみましょう。倍率が高くなるほど(鏡筒がブレて)難易度が上がります。ヤワな架台ほどブレやすくなります。まともな架台の筈なのにブレる様なら、三脚各部や架台にガタが無いか、各部を握ったまま鏡筒を揺らして確認してみましょう。(ガタがある部分には、手の平が挟まれる様な感触があります)

4.ファインダーを合わせる
 鏡筒の方で特定の何か(看板とかライトとか)にピントが合わせられたら、ファインダーの調整に移ります。
 購入直後には、ファインダー自体のピントが合っていない事があります。ファインダーのピントは(一部を除いて)前と後ろ、別々にあって、後ろのピントは、中の十字線(レティクル)がはっきり見える様に合わせて、前(対物レンズ)のピントは対象(この場合は当然、星)にピントを合わせます。1kmも離れた対象なら、だいたい星のピントと同じでしょう。ピント調整は普通は最初の1回だけです。(望遠鏡に取り付ける前に調整すると楽です)
 ピントが合ったら、ファインダーの角度を、通常はレティクルが「+」に見えるように合わせます。好みで「×」にする人もいますが、まぁ好きずきです。ピントをきっちり合わせると、星がレティクルの影に隠れて見えなくなってしまう、という訳で、少しだけピントをずらす人も多いですが、まぁ好きずきです。
 それから、鏡筒で見ている地上物に合わせて、ファインダーを合わせます。
 地上物でファインダーを合わせる場合、普通は1km以上遠くのものを使いますが、最初のうちは数100m先の物でいいです。どうせ次からは、ほぼ毎回ファインダーを調整する事になりますから(笑)。
 ファインダーも一般的には天体望遠鏡と同じ、倒立像(逆さま)なので、ファインダー調整のネジの動きと、見えている像の動きがちぐはぐになって、うまく合わせられない事が多いでしょう。
 慣れなので、諦めてしつこく練習して下さい。
 コツとしては、3本の調整ネジを3つ別々に考えるのではなく、左2+右1で左右、下2+上1で上下、と、3本のうち2本をにして考えると、多少わかりやすくなります。まぁ慣れれば3本別々に同時に回して、あっという間に合わせられる様になります。
 倒立像にならない正立像のファインダーもありますが、これはこれで、鏡筒で見えてる像とファインダーで見えてる像の上下が逆になるので、どこを見ているのかが一致せず、うまく合わせられない事もあります。まぁ好きずきです。

ファインダー調整ネジが後部に付いている場合、調整ネジと中の星の動きは、下の図のような関係になります。

上のネジを締めこめば星は上に、

左下のネジを締めこめば星は左下に、

右下のネジを締めこめば星は右下に動きます。(※倒立ファインダーの場合。正立ファインダーの場合は動きが逆になります。)
 この3つの動きの組み合わせで、目標物をファインダーの中央に追い込んでいくだけなので、焦らずにやれば「できない」という事はありません。ファインダー調整ができなければ、望遠鏡自体を天体に向ける事ができないので、慣れるまで練習して下さい。

 最近は望遠鏡タイプではない、シースルータイプで真ん中に赤いLEDの「・」(ドット)や「◎」「+」印などが浮かんで見える、等倍ファインダー(レッドドットファインダーやダットサイトなどと呼ぶ事もあります)を採用する機種が増えてきました。元々は速射を要求されるシーン(競技や市街地の対テロ戦など)での銃の照準器です。

 この等倍ファインダーは、構造的にも設計的にも、少し離れた方が見やすくなります。30cm以上は離れた方が見やすいでしょう。右目で等倍ファインダー越しに対象を、左目はそのまま対象を、と、両目を使う様にすると楽です。そうすると、右目には、対象にまるで赤いレーザーを照らしているように見える筈です。
 対象が星なら、赤いドットと星が重なるようにすればいいわけですが、ファインダー自体には倍率が全く無いので、鏡筒の方には、あらかじめ低倍率なアイピースを付けておいて、改めて位置を微調整する事になります。初心者用に普及してきていますが、星雲星団の位置が頭に入っているマニアにも、素早く操作できるという事で、広く受け入れられています。(形だけの全然使えない安物もありますが。)
 裏技として、双眼鏡などで対象を等倍ファインダー越しに見る、という方法もあります、案外イケます。
 等倍ファインダーの場合、ほとんどの物は付属のヘキサゴンレンチを使用して上下左右の調整を行います。(ビクセンの物は台座でもおおまかな調節ができますが、台座のネジはかなりギッチリ締めないと、すぐ緩みます)
 等倍ファインダーは構造的に、一度調整したら、あとはあまり調整しませんが、望遠鏡タイプの一般的ファインダーは、だいたい持ち運びの度に多少ズレるので、毎回調整した方が間違いないです。そうこうしてるうちに、すぐ慣れてしまいます。

5.望遠鏡を設置する
 組み立てと調整が一通りできたら、いよいよ実際に観望(観測)に使います。
 しっかりした地面に、水平になるように、きちんと三脚を開いて設置します。
 あたりまえの事の様ですが、たまに使用中に三脚がズレたり、三脚を開ききっていなくて倒してしまう事があります。基本的な事だからこその見落としがあったりするわけです、イヤですね。
 しっかり設置してても、自分で三脚に足をひっかける事もあります。誰かがひっかける事もあります。ただでさえ暗闇ですので、足下不如意は仕方無いかもしれません。
 こういう時のために、三脚の先や中間などに、蓄光シールなどを貼っておくと良いです。防災用としては、どうも気休めにしかなってない気がする蓄光シールですが、星見の時には案外見えるものです。普段、箱などに収納していて蓄光シールが蓄光していないという事もありますが、ここで裏技。蓄光シールは、青(もしくは白)LEDを使うと、一気に蓄光します。
 三脚に蓄光シールを貼っていても、その周囲にごちゃごちゃ荷物を置いておくと、そっちに足をひっかけてコケて望遠鏡に激突してしまいかねないので、グランドシートなどの上に荷物をまとめておくような癖を付けましょう。グランドシートの半分に荷物を置いて、もう半分は荷物の上に被せるようにすると、夜露避けにもなります。夜露は時々、シャレにならないくらい荷物をびしょびしょにします。

6.月を見てみよう
 見えていれば、昼間でも観測できるです…が、やっぱり最初は夜に見てみましょう。
 今までの復習を兼ねた実践です。
 組み立て→設置→ファインダー取り付け→導入→ピント合わせ→ファインダー微調整、という流れに(慣れれば)なります。
 まぁ最初のうちは、月を相手にファインダー調整は無理でしょう(笑)。あれこれと調整してる間に、どんどん月は動いて行ってしまいます。おとなしく、遠くの看板か街灯か何かでファインダー調整しましょう。
 ピント合わせの実践も、ここが本番です。まずは低倍率のアイピースを付けて、月にピントを合わせてみましょう。それができたら、アイピースを買えて倍率を上げてみましょう。
 低倍率のアイピースなら比較的楽ですが、高倍率になるほど、ピント合わせで望遠鏡に触るだけでブレて、ピントが合ってるのか合ってないのかわからない状態になるでしょう。架台がヤワだと尚更です。
 そして、ピントが合った、と思って覗いているうちに、月もどんどん移動してしまいます。移動した月を見続ける為には、追尾しなくてはいけません。
 これもファインダー調整と同じで、上下逆になるので、初めてのうちはうまくいかない事が多いです。(まぁすぐ慣れますが)
 徐々に倍率を上げて、どんどん月の細部を見てみましょう。そうこうしてる間に、自然に望遠鏡の操作は身に付く筈です。倍率を上げて月の地形を散策していくと、希に奇妙な地形が見つかる事があります。月齢によって見えたり見えなかったりなので、しつこく観測してみましょう。

7.天の川を見てみよう
 「望遠鏡は倍率を高くして覗くものだ」という意識がおそらく一変するのが、天の川です。特に夏の天の川の散策は溜め息物です。超巨大な宝石箱を覗いているかの様な、望遠鏡を持つ人だけの贅沢なひとときでしょう。
恥ずかしいセリフ禁止!!
 天の川の位置は、勉強を兼ねて自分で星座早見盤などで確認してもらうとして(見えない時期・時間もありますし)、望遠鏡の倍率は、できるだけ低くしてみましょう。広視野アイピースが使えれば言うこと無しです。
 目的の星を探すのではなく、天の川を、ゆっくりと移動して、たまに止めて眺めてみます。高倍率ではあまり意識する事の無かった、視野いっぱいの星と、たまに入ってくる星の密集地帯=星団、場合によっては星雲にも気付くでしょう。
 コツは、とにかく、ゆったりゆっくりと散策する事です。日没後しばらく、あるいは夜明け間近なら、たまに視野いっぱいの星の中を、それこそUFOの様にスーッと人工衛星が横切ります。それを追いかけてみるのも面白いです。
 高さの調整できる椅子などを用意して楽な姿勢で覗けるようにしておくと、かなりのリラックスタイムになるでしょう。

7.メシエ天体を見てみよう
 「メシア天体」でも「飯屋天体」でもなく、メシエ天体です。昔、彗星を発見しようとしてたメシエさんが、彗星と間違えやすいボワッとした天体に番号を付けて、間違えないようにしといたのが始まりで、初心者でも見つける事のできる天体も多くあります。
 おそらく、最も簡単に見つける事ができる星雲は、M42オリオン大星雲です。口径4cmの望遠鏡でも、小型の双眼鏡でも簡単に見つける事ができます。見つけ方は、「オリオンの三ツ星の下(南)に縦に並んでる小三ツ星の真ん中」です。(南半球では南は上になるので、小三ツ星は三ツ星の上にきます。)おうし座のM45プレアデス星団(すばる)は、肉眼で普通に見つけられます。すばるは空が暗い場所なら「青白い霞の中に星が5つ以上固まってる」ように見えると思いますが、この星団の背後には実際に青白く照らされているガス星雲があります。空の条件が良ければ、双眼鏡や低倍率の天体望遠鏡でも星を包むように青白い光が確認できます。
 夏なら、100倍くらいかけると、こと座の平行四辺形の、ベガとは反対側の短辺になる2つの星の中央付近にある、M57リング星雲が見つけられます。さそり座のアンタレスのすぐ右下には、(意外にチャチですが)M4球状星団があります。いて座の南斗六星の柄杓の柄の右側には、明るくM8干潟星雲とM20三裂星雲があります。というより、いて座の周辺は星団がうようよです。
 秋なら、アンドロメダ座の膝元にM31アンドロメダ大銀河が、膝裏の方にはM33渦巻き銀河があります。
 詳しい場所は、星雲星団ガイドなどの本を用意して、望遠鏡の横に置いて、星の並びと比較しながら探していきます。
 つまり。
 星の並び=星座がわからないと、目安になる星も見つけられない、目安の星がわからないと星雲星団の位置も見当がつかない、という事です。(唯一の例外はM45?)
 星座がわからないまま星雲星団を見ようとするのは、一気に近道をしているつもりで、実は逆に遠回りをしています。
 夏には夏の大三角、秋は秋の大四辺形、冬には冬の大三角(と冬のダイヤモンド)、春には春の大曲線・春の大三角(と春のダイヤモンド)という星巡りの目安となる物が存在します。これらの目安から明るい星座を探して、そこから連鎖的に星座を結んでいきます。
 星座の位置がある程度でも頭に入っていて、星座の形・大きさを現物で確認しておけば、改めて星雲星団ガイドに目を通しても、直感しやすい筈です。(星座がわからないのに星雲星団ガイドはほとんど役に立たない、と言ってもいい位です。)
 メシエ天体は、環境が良ければ、ほとんどは8cm屈折で見る事ができます。ただ、あくまでも「環境がよければ」の話なので、そうそう環境のいい場所まで出かけられない時は、明るい場所でも見つけやすい星雲星団にターゲットを絞ったガイドブックを参考にしてみましょう。

 また、惑星や月などと違って、星雲や星団は(多くの場合)ボワッとした淡い、まるでシミみたいにしか見えない事もあります。こういう天体を見るには、惑星などの様に「一生懸命、凝視する」という方法で観察しようとせず、通称「逸らし目」と呼ばれる、目標天体の”周囲”を見る事で逆に目標天体が明るく見えてくるという網膜細胞の特性(興味のある人は、錐体細胞・桿体細胞でググってみましょう)を考慮した観察方法を行ってみて下さい


写真で撮影したM42オリオン大星雲のイメージです。肉眼では色はほとんど見えません。


M42オリオン大星雲を望遠鏡で凝視すると、凝視したポイント(視野の中心付近)は淡い光に対して感度が足りないので、逆に見えにくくなります。


そこで、「逸らし目」で、緑のエリア(つまり対象天体の周囲)をぐるぐると見回すようにすると、中心にある星雲が逆にハッキリと見えてきます。
星雲星団がよく見えない、という人は大概、一生懸命視野中心で凝視して、逆に見えなくなっている事が多いので、上記のような見方を意識してやってみましょう。

8.プラネタリウムソフトを使って天体を探してみよう
 普通なら「星座早見盤で星を探そう」とか「星雲星団ガイドを見てみよう」になりそうな項目ですが、ここはあえて、ハイテク電子機器を使ってみましょう。
 筆者はアストロアーツから出ている「ステラナビゲータ」と、Toxsoftから出ている「ステラシアター」、国立天文台の「Mitaka」(「Mitaka Plus」)などを使用しています。(ステラシアターには、フリーソフトのLiteやネット経由で使える簡易なWebがあり、Mitakaはフリーウェアです。)
 また、PSP用に「ホームスター・ポータブル」、DS用に「星空ナビ 」、iPhone用に「iステラ」などもあります。iPadやAndroid端末用にもいろいろなアプリが出ているので、スマートフォンやタブレット端末を使用している場合には探してみると面白いでしょう。

 ひとまずは、初心者がパソコンで使う分には、フリーソフトのステラシアターLiteでも十分な機能を備えていると思います。動作も軽いですし。
 まずインストールしたら、観測地(ダイアログに無ければ一番近い場所)を選んで、後はカレンダーで日時を入れるか、現在時刻を設定すれば、すぐに画面上に「その場所で見上げた、その時刻の星空」が表示されます。必要に応じて星座線をON/OFFしたり、惑星の表示をON/OFFしたり、星雲星団の表示をON/OFFしながら、画面をクリック・ドラッグや拡大縮小するだけで、擬似的に星空散策が始められます。
 後は、この擬似星空散策(星を辿る作業)を本物の星空相手に行って、目指す星雲や星団を見つけ出すだけです。最初はうまく一致しないかもしれませんが、方位・高度線をONにしたまま表示させれば、「この方向、この角度!」が直感的に認識しやすくなるでしょう。(この、「この方向、この角度!」は、まんま経緯台の操作感覚と同じですね。)

 プラネタリウムソフトならではの威力を発揮&実感するのは、彗星の位置を予測表示させたい時だったりするんですが、ステラシアターLiteは彗星には対応してません。(Proは対応してます。)このサイトで彗星情報を掲載する際には、ステラナビゲータの方を使って予想図を出力させてますが、いきなりの初心者には機能が煩雑だったりするので、目的やレベルに合わせて選んでみましょう。
 ソフトによって表示できる恒星の数に大きく差があったりしますが、肉眼で星の位置を確認しながら惑星やメシエ天体を探す、なんて使い方では、恒星データは1万も必要ありません。数千個(あるいは数百個)で十分です。望遠鏡の視野の中で微光星の配列を辿りながら小惑星や暗い彗星・星雲を探す、なんて時には場合によっては100万個でも役不足に感じる事もあります。目的やレベルに合わせて選びましょう(笑)。

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