順を追って望遠鏡を理解して欲しいので、このページへの直リンはご遠慮下さい。また画像・文章の無断転載は禁止します。
5.初心者でも扱いやすい望遠鏡はこれ
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 そんなわけで、初めての天体望遠鏡は勢いのままに「屈折望遠鏡」に決まりました。反射望遠鏡を選んだひとは、もういいから次のページに進んで下さい。

 それでは具体的に、どれを選びましょうか。
 これは、どちらかといえば、予算との相談です。
 架台は、経緯台式と赤道儀式がありますが、赤道儀式は、セットで安くても10万円はしますからね…。それに、赤道儀式は基本的に、設置=設定、ですから、「出して、パッと使う」というにはあまり向きません。腰を据えて長時間覗き続ける場合は赤道儀式が楽ですが。
 一応、赤道儀式のセットで3〜4万円位あるいはそれ以下で売られてる様なのは疑って下さい。赤道儀は本来そんな安価な機械ではありません。

 初心者に勧めるのは、まず第一に「ちゃんと見える事」、そして「扱いが楽な事」です。ろくに見えない望遠鏡は論外として、扱いが複雑な機種は、いくら高機能・高性能でも、ちょくちょく好きなときに星を見よう、という気にはなりません(稼働率が落ちます)。見たいときにすぐ見れる、これが初心者用としては最強スペックでしょう。(自動で望遠鏡が入れてくれる天体を眺めるだけでいいのなら、天文台にでも行った方が確実かつ高性能で、更に安上がりです)

 実際、筆者が自宅で望遠鏡を覗くときは、9割方、経緯台です。自宅で赤道儀は面倒なのでほとんど出しません。(ただし遠征時や観望会では、9割方が赤道儀ですが)
 ただ、「ヘタでもいいから天体写真を撮ってみたい」とか「使い方はがんばって憶えるから、家族みんな(あるいは仲間たち大勢)で星を見て楽しみたい」という人は赤道儀を選んだほうが良いです。自分一人で見る=経緯台、大勢で見る&写真撮影=自分以外の人や機械にも見せる=赤道儀、という選択になります。現在の多くの鏡筒はマウント部分が共通化されているので、鏡筒1本に経緯台と赤道儀の架台使い分けも可能ですので財布と相談して下さい。


 天体望遠鏡の価格相場をよく知らない初心者の方々は「とにかく安いの。」と値段の安さを購入の指標にする傾向が強いですが、その場合はうかつにディスカウントショップで4000円前後のセットを買うより、こっちの、星の手帖社から出ている書籍扱いの「10分で完成!組立天体望遠鏡 15倍」はどうでしょう。お値段なんと1580円です。さすがに三脚は付属しませんが、この大きさと倍率なら、案外なんとかなります。小学校1〜3年生の簡単入門機、あるいはもっと上の学年でもレンズの仕組みを理解しつつ体験学習できるのでお勧めです。(マニアな大人の改造素材としても)
 組立キットですが、文面通り、説明に従って組み立てれば10分から、せいぜい20分もあれば簡単に組み立てられます。(難易度はガンプラより下かも)
 またあまりに安価なので、全然使えないんじゃないか、と思ったらこれが大間違いで、国立天文台の渡部潤一先生の監修により、非常にバランス良く出来ていて、像もとてもクリアです。世界天文年2009の「君もガリレオ」国際公式教材にもなりました。
 倍率は15倍固定と、あえて低めに抑えられていますが、かのガリレオが木星の衛星などを発見した時に使っていた望遠鏡も、倍率は20倍程しかありませんでした。もちろん、この望遠鏡でも木星の4つの衛星(ガリレオ衛星)は非常によく見えます。よく観察すると、木星本体の縞模様が2本あるのもわかります。手持ちで使用すると安定して覗けないので、できるだけカメラ三脚などを使用して、安定させて覗いて下さい。手持ち状態と三脚使用状態では、見え方が格段に変わります。
 月のクレーターも、「くっきり見るために必要なのは倍率じゃなくて、解像度なんだ」と実感する様に、低倍率なのに引き締まってクッキリと見えます。
 土星の輪は、よーく観察すれば存在の確認はできますが、ガリレオが土星の輪を「輪である」と確認しきれなかった様に、この望遠鏡では輪としての確認は難しいです。他の星(惑星)と違って変な形をしてるのはわかります。
 本格的に始めるかどうするか迷っている時など、「初めての1本の前の、お試し望遠鏡」としては非常に優秀でしょう。
 接眼部を改造して市販のアイピースを使える様にすれば、土星の輪も見ることができる位になりますが、アイピースや三脚を含めた総予算的に、マニアの知的好奇心の一環として楽しみましょう。 (※お手軽な改造として、部品の中にある、接眼部にはめる黒いワッシャみたいな絞り環の穴を、ドリルなどで直径で2〜3mm拡大すると、視野が広くなって見やすくなります。あまり広げすぎるとかえって見え具合が悪くなります。削った部分はペーパーなどで綺麗に処理します。鏡筒の遮光環は削らないで下さい。鏡筒と接眼部の内面、遮光環を艶消し黒で塗って迷光処理すると、月や地上風景などのコントラストが若干上がります。)
 接眼部のレンズ構成と材質をグレードアップした35倍版が2880円で販売されていますので、おとなしくこちらを買った方が簡単確実でしょう。35倍あれば、小さいながらも土星の輪はちゃんと見えます。(ただし、ブレの少ない三脚に乗せての使用が前提になります。)

 組み立て時のコツというか注意点としては、
1.対物レンズにゴムのリングをはめる時は落ち着いて
2.レンズに指紋を付けないように、指紋が付いたら石鹸と水で水洗い、ティッシュでゴシゴシ拭かない
3.プラボディでレンズを挟み込んで固定する前に、レンズに付いたホコリをエアブロアなどで吹き飛ばす
4.テープで固定する前に仮組みの状態で覗いてチェックする
(5.もし持っていれば、接眼部のヘリコイドねじ部分にグリスを薄く塗っておく)
程度でしょうか。
 組み立ててみればわかりますが、接眼部全体がネジになっていて、ピント合わせは接眼部ごと回転させて前後する方式(ヘリコイド方式)です。初めて使う時は、どのあたりでピントが合うのか分かりにくいかもしれませんが、ある程度遠くの地上景色でピントを合わせて、それから月や星などにピントを合わせてみて下さい。星に向けた時のピント位置は、けっこう縮めた状態です。室内でピント合わせをして、その状態で星を見ようとすると戸惑います。

 似た商品で、ベネッセや学研が教材として出している組み立て望遠鏡がありますが、そっちは玩具レベルなので間違えないで下さい。(一応でも教材として売ってるんなら、せめて月のクレーターのディテールくらいは見える物を出すべきだと思うんですけどね。)

 組立望遠鏡シリーズには「正立望遠鏡」もラインナップされていますが、こちらは天体望遠鏡ではなく地上望遠鏡(フィールドスコープ)になります。星の観察に使えない訳ではありませんが、見比べると像質は(正立プリズムを経由する関係で)膜一枚通したような感じで不鮮明になります。見比べなければわからないかもしれませんが、「あくまで星を観察したい」のか「星もだけど鳥や景色もいっぱい観察したい」のかで選び分けて下さい。

 この星の手帖社の組立望遠鏡と双璧を成すのが、オルビィス社の「コルキット」シリーズです。
 こちらも組み立て式の望遠鏡のシリーズですが、スペック的には更に本格的になります。口径4cmの小型の物から、口径6cmでそこそこの大きさの物、果ては口径114mmのニュートン式反射望遠鏡のキットもあります。
 鏡筒の素材は圧縮ボール紙(サランラップの芯みたいなやつ)ですが、そのまま組み立てるも良し、寸法を考えて塩ビ管などを自分で揃えてみるも良し、ジャンクの望遠鏡を買ってきて中身だけを移植してしまうも良し、スキルに合わせて組み立てや改造に挑戦できます。


 小学校低学年〜中学年だと、軽くて扱い方が直感的なもので、でも扱いがけっこう荒いので高額な機種を選ぶのは少し待ったほうがいいでしょう。安価な入門機で「そのまま天文への興味が続くか」を確認してから選んだほうが良いでしょう。
 子供向け入門用天体望遠鏡はトイザらスなどにも売っていますが、選ぶときは必ず「日本製であるかどうか」を確認しましょう。外見が似ていても日本製と中国製では雲泥の差があると思っておいたほうが安全です。また商品説明にある最高倍率は「性能とは別問題」だという事も覚えておきましょう。詳しくは後のページで説明していきます。(要は「付属のバローレンズに使い道は無い」と思っておけばいいです。)
 できれば現物を確認して選んで下さい。

 小学校高学年から中学生くらいの入門用望遠鏡の場合、だいたい価格相場は2万〜3万円くらいです。価格が高くなるほど当然使用しているレンズやパーツも良くなり、「よく見えて長持ちする」ようになります。安価な物になると普通は金属を使用する部分が樹脂パーツになっていたり、必要最低限の強度しか確保しない代わりにコストダウンをしているので酷使に耐えなかったり、という事に繋がりやすくなります。
 入門用天体望遠鏡のオーソドックスなスペックの物はこのあたりになります。
 全く違う方向性から、「自分の欲しい望遠鏡を自分の好みに応じて組み立てていく」というレゴみたいな望遠鏡もあり、BORGの望遠鏡と言えば見た目に反してあなどれないというのは天文ファンの間ではけっこうよく知られています。ただし本気でパーツを組み合わせていくと当然どんどんコストもかかるので、最初はミニボーグ50天体セットあたりから入って、地道にパワーアップしていった方がいいでしょう。筆者もBORGのパーツやはよく使用していますし、ペンシルボーグ25をサブスコープとして使用する事もあります。(ペンシルボーグ25でも土星の輪は見えるんです実は)

 初心者用機種を選ぶ時には予算と売価の兼ね合いで決めることがほとんどになりますが、できるならば「拡張性のある機種」を選ぶと後のステップアップの時に安上がりで済みます。
 例えば「架台はミニポルタではなくフルサイズのポルタU」とか「接眼部は24.5mmサイズではなく31.7mmサイズ」とかですね。ポルタU架台は後々ずっと使えますし、31.7mmサイズのアイピースも上位機種ではまず間違いなくそのまま使えます。ポルタUとセットになっている鏡筒なら赤道儀に載せて使用しても問題無いので赤道儀だけ買えばいい事になります。
 天体望遠鏡は規格がかなり共通化されていて、違う規格の物でも取り付けられるような工夫がしてあったりするので、ステップアップ時にあまり悩まなくて済むようになっています。あまり安価な望遠鏡ではこの規格に沿っては作られていないので、後のステップアップ時には必然的に全てを買い換える事になります。そこは覚えておきましょう。

 さて、どちらかというと大人向けの、もう少し本格的なタイプだと、だいたい口径80mm以上が目安になってきます。
 ステップアップも見越した、口径80mmのオーソドックス&オールマイティな機種といえばポルタUA80Mでしょうか。値段はセットで4〜7万円くらいになります。(ビクセンの機種名の最後に「f」が付くものは中国製です。)
 本来、口径80mm前後が初心者用としてもほとんど間違いが無く、ハイアマチュアになっても使えるクラスなので、望遠鏡自体も激戦区となっていて選択肢が多くなっています。
 適性を理解しつつ、取り回しやすい小型軽量なセット…という方向であれば、価格は上がりますが、ポルタUED80Sfでしょうか。
 このクラスの”マニア向け”としては笠井トレーディング扱いのものが実視テストを経て販売されているので定評があります。スタークラウド扱いのウィリアムオプティクス製品も、自社テストを通過した、おそらく世界一精度にうるさい日本人でも納得できる製品のみ販売していますから、かなり安心して選べます。(※別ルートあるいはウィリアムオプティクス直販で購入した場合は検品無しと思って下さい。)
 ポルタ経緯台は、微動はもちろん、フリーストップ経緯台としても使えるので、初心者のみならずハイアマチュアにも非常に人気のある架台です。フリーストップの固さをいつでも簡単に調節できるクランプと組み合わせると更に使いやすくなります。

 少し本格的な大人向け入門機、という場合なら、ポルタ経緯台のみに、スタークラウドのZenithstarシリーズなどを組み合わせてみると面白いでしょう。この場合、ファインダーやアイピース、天頂ミラーやプリズム類は全て別売りで揃える必要がありますが、最初からこだわりの組合せにする事も可能です。周辺アクセサリは他の初心者向け望遠鏡と違って、やや組み合わせが複雑になります。裏を返すと発展性があるという事なので、永く愛用できるでしょう。仮にステップアップで大口径鏡筒を購入しても、性能のしっかりした小型屈折鏡筒は手放さずに持っておくと、必ず出番が来ます。
 もう少し予算を絞りたいんだけど…という場合には、TELESCOPPER.JPが扱っている安価な鏡筒を選ぶ事もできます。(たまに在庫切れの事もありますが)
 尚、ZenithstarやBLANCA-70EDをポルタに搭載する場合、ポルタのアリミゾ台座をプレートホルダーSXに交換しておくか、鏡筒側にアリガタプレートを追加しておいた方が装着が安定します。

 このクラスはとにかく選択肢が多いので、楽しみながら悩んで選んでみましょう。アイピースなどもいろいろ悩んで迷って選んで「自分の観測セット」を組んでみて下さい。


 ここで取り上げている機種はほんの一部にしか過ぎません。他にも安価な機種からものすごく高価な機種まであります。このページを見ている時点で、安価な機種を探しているであろう事は簡単に想像できますが、先に書いたような「無知な初心者狙いのダメ望遠鏡」もあれば、「1年、もしくは半年で使いにくさに我慢ができなくなってくる望遠鏡」という物もあります。
 望遠鏡を扱う際に最初に不満を持つのは、おそらく三脚・架台の強度だと思います。しかし強度の高い三脚や架台は実は望遠鏡本体よりも高額な買い物になる事も珍しくない上に、強度が上がると重量も重くなってしまうのが普通です。このあたりは天文ライフスタイル&財布と相談して自分の希望に合ったものを探して下さい。
 一方で、鏡筒自体の強度が足りなくて、揺れやたわみが収まらずに天体を観察するのに無用な神経を使ってしまう、樹脂鏡筒の入門用望遠鏡もあります。最近のエントリークラスに樹脂製の鏡筒を採用している物が多いですが、決して長く使えるようには作られていないので、少なくとも数年間使い続けるつもりならば金属鏡筒の望遠鏡を選んだほうが結果的に安上がりになるでしょう。

 たまに「口径6cmや8cmじゃオリオン大星雲の翼を広げた形なんか満足に見えない」などと言っちゃってる人もいますが、6cmや8cmで満足に見えない環境では、20cmや30cmでもたいした見え方はしません。本当に暗い澄んだ空で使えば、6cmや8cmでも悠然としたオリオン大星雲の形は見ることができますし、そういう場所で20cmや30cmを使うと、ガスの細部まで見えて立体的に捉えられます。つまり「見えない」と言っちゃってる人は、20cmや30cmを使いながら、実は6cmや8cm相当の性能も出していないのです。天体の見え具合は、(高性能な大望遠鏡+イマイチな空)<(並の望遠鏡+良好な空)です。もちろん(高性能な大望遠鏡+良好な空)が最強であるのは間違いありません。(※月・惑星では、空の暗さよりも気流の安定度の方が重要です)
 ネットで実際のユーザーのインプレ記事を検索するとかなり参考になりますが、「自分は初心者だから、他の初心者のインプレ(例えばAmazonのカスタマーレビューとか)を参考にしよう」という方向では検索しない方がいいでしょう。できる限り、高性能な物からダメダメな物まで覗いて比較経験のあるマニアックな人のインプレを探して参考にして下さい。

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