3.どこで天体望遠鏡を覗く?
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 天体望遠鏡を買おうとする時、意外に見落としがちなのが、「どこで望遠鏡を覗くのか」という事です。特にアパート・マンション住まいの場合、切実な問題になってきます。そんな心配の無い人は、とっとと次のページに進んで下さい。

 庭のある一戸建てなら庭でもいいんですが、最近は周囲の家が普通に2階建てになっていて、庭から見える空もそれほど広くない場合もあります。
 庭が無いとか、ベランダしか無い、ベランダすら無い、という場合、初心者が考えてしまうのが、「天文台みたいに、部屋の中から覗けばいいじゃん
 天文台は冷暖房いれて望遠鏡は覗きません。屋内の空気と屋外の空気の温度差で、かげろうの様に空気が揺らいでしまって、とても土星の輪など観察できる状態ではなくなります。ハワイ・マウナケア山頂にあるすばる望遠鏡などは、人の体温からくる空気の乱れも嫌って、観測は全て遠隔操作にしている位です。
 ましてや、窓ガラス越しに望遠鏡を覗く、なんて事はありません。
 まぁ、一度やってみればわかります。

 結局、庭があっても周囲のずさんな設計の街灯が人の家の中まで無駄に照らしてくれてたり、空を見てるのか隣の家の部屋を覗いてるのかわからない様な状態になったりで、最近は(郊外を除いて)望遠鏡を持ち出して”遠征”と称して離れた所に行って望遠鏡を覗く事が多くなりました。
 とはいえ、「ほんの30分ほど覗きたいだけなのに、そのために往復1時間かけて出かけるのはイヤだ」というのもあたりまえな話なので、現実的に妥協点を模索しましょう。
(※「天体望遠鏡でマンションを覗き」とかいうキーワードで検索してこのページに辿り着いた人に朗報。そんな細かい心配をしなくても、最近は星を見てるだけでも比較的頻繁に警察に職務質問されるので、覗きをやってればすぐに捕まるでしょう。ていうか捕まれ。)

 まず月・惑星は、郊外とか山の中とか行かなくても、市街地でもちゃんと見えます。街明かりに全然負けない明るさですから、光の問題はあまり心配いりません。
 金星や水星といった内惑星は別にして、火星や土星・木星などの外惑星は、地球と近づいた条件のいい時に、深夜に南の高い位置に見えます。真上付近なら、狭い庭やベランダしか無くても覗く事ができます。
 どうしても部屋の窓からしか覗けない、という場合は、室内と外気の温度差を無くすように、しっかり換気しながら覗きます。望遠鏡が気温に比べて熱い・冷たい場合にも、空気のゆらぎは起きますから、これも気を付けましょう。

 星雲・星団・銀河は、おとなしく出かけましょう。暗さに目が慣れても足下は懐中電灯が無いとおぼつかない、くらいに暗い場所が欲しいです。暗さは、望遠鏡の性能を飛躍的にアップさせてくれる様な錯覚を起こします。実際は暗さが性能をアップするのではなく、光害が性能をスポイルしてしまっているのですが。つまり、暗い場所に赴けば、今まで自分の望遠鏡では絶対に見えないと思っていたものが見える様になってきます。経験してみるとよくわかります。(あくまでも、空気が澄んでいる、という前提での話ですが…)
 昔の人が、たいした望遠鏡も無かった時代の筈なのに星雲や星団に番号や名前をつけてた理由も、なるほど、当時の空なら見えてたんだなぁ、と納得するでしょう。写真ではよく撮影されているけど肉眼ではあまり観望対象にされていない、はくちょう座のデネブの横にある「北アメリカ星雲」も、本気で空の暗い場所なら、望遠鏡も特殊なフィルターも何も使わず肉眼で「あぁ、なるほど北アメリカの形ね」という風にけっこうデカく見えています。
 その時の覚悟や時間的余裕から考えて、近所の公園や広場に出かけるか、県境を跨いだ高原まで行くかを決めましょう。望遠鏡1本程度の遠征なら、案外近場でも穴場が見つかります。

 「どこで覗くか」というより、「どうやって望遠鏡を運ぶか」を考えなくてはならない場面も出てきます。
 F値の大きい長焦点な鏡筒は、持ち運ぶだけでかさばります。架台もけっこうかさばります。赤道儀ともなると、車か何かでないと1人では運べなくなります。
 最近、短焦点の屈折鏡筒が流行っているのは、こういう面が少なからず影響している結果かもしれません。(写真撮影のために選んでいる人もいますが)

 経験では、口径80mm焦点距離910mmの屈折望遠鏡と赤道儀のセットなら、無理矢理1人で自転車で運べます。衝撃に弱い鏡筒と赤道儀は背負って、三脚は荷台に…という感じで何とかなります。でもチャレンジの域です。
 危険の無い範囲でなら、チャレンジしてみるのも一興ではないでしょーか。

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