※価格.comであちこちにこのページのリンクを張り付けまくっている方がいますが、知り合いでも何でもありませんので誤解無き様おねがいします。
1.望遠鏡選びの基本
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 初めて天体望遠鏡を買おうと思った時、まず「どこで」「どれを」選んでいいか、わからない人も多いでしょう。
 カタログを見ても、望遠鏡の寸法や重さ、倍率くらいはわかるとして、集光力とか分解能とか「なにそれ、モンスターを倒すのに必要なの?」的に意味のわからない数字が並んでいて理解不能でしょう。実際のところ、上級者になる程、そんな戦闘力じみたカタログ数値なんか見ちゃいないんですが(笑)。ややこしいですね、望遠鏡のカタログ。
 理想は、誰か望遠鏡や天体に詳しい、相談できる人がいて、その人にアドバイスしてもらって、ついでに使い方や天体の場所も教えてもらって「わぁー惑星や星雲がこんなにキレイでアハハウフフ♥」…でしょうが、そんな人は最初からこんなページにアクセスしてませんよね。はぁ。
 …というわけで。

 まずは、「どこで」
 基本は、光学製品を扱っているお店、あるいは望遠鏡専門店です。最近はネット通販で全国どこでも買い物ができて便利です。通販ではなく、近くの店舗で店員の人に相談しながら決めたい、という場合であれば、だいたいカメラ店やメガネ店でしょう。例えば宮崎であれば筆者がメガネを作ってもらってる店(メガネの三城)でも相談できますし、普段利用するカメラ屋・写真屋でもカタログが置いてあったりします。個人経営のメガネ屋さんなんかに時々、天体望遠鏡にかなり詳しい店があります。(昔はメガネ屋の店先によく天体望遠鏡が展示してあったんですけどね。)
 大規模家電店でも扱っている事がありますが、要は、お店の人が、きちんとその商品=天体望遠鏡の内容を把握しているか、が重要です。(売っているだけで、適切な消費説明ができない店での購入は避けたほうが無難です。ただUSB接続の安物ウェブカメラみたいなものが付属しているだけで「コンピュータで自動制御・自動導入!」なんて大たわけな商品説明で売っている大手超有名家電量販店もあります。)
 店員が望遠鏡に詳しいかどうかは、意外に簡単な質問でわかります。「この望遠鏡でどんな星が見えるんですか?」というのは、初心者にとっては素朴で簡単だと思いがちな質問ですが、この「選び方」のページを読み進んでいけばわかると思いますが”けっこう答えようのない質問”です。そうではなく、「初めての初心者が最初に見るなら、どの星がいいですか?」(→「月」)とか、「この望遠鏡ではどれくらいの倍率で見るのが一番適切ですか?」(→「口径mmと同じ数字倍率くらい」)とか、そんな感じです。パッケージ印刷に書いてある事をそのまま読むだけの店員だと、あまり詳しくないと思っていいかもしれません。

 次に、「どれを」
 自分で天体望遠鏡や双眼鏡を所有した経験の無い人は、多くの場合、惑星や星雲星団を(個人の趣味で)見るのに、どのくらいの倍率が必要なのか分からないと思います。まぁ所有した経験があって、そのあたりまで分かっていれば、こんなページにアクセスもしてないでしょうが。
 一般的には、100〜150倍くらいが初心者の扱える限界点と考えてもいいでしょう。それ以上の倍率では、かなり繊細な扱いが必要になって、持て余し気味になります。350倍や525倍、最近では700倍や1000倍とか謳ってる望遠鏡も登場して失笑物ですが、そういう極端な高倍率は絶対に使えません。その様な倍率を扱うためには、何かの兵器の様な巨大な望遠鏡(例えばマイクロバスくらいのサイズの望遠鏡とか)と、そして相当に繊細な扱い(例えば周囲100mは立ち入り禁止で望遠鏡は遠隔操作とか)が必要です。
 そもそも天体望遠鏡という物は、倍率では性能を表せません。というのも、倍率は単なる計算値(鏡筒の焦点距離÷接眼レンズの焦点距離、場合によってはこれにバローレンズの倍率を掛けたもの)で、計算上でなら倍率はいくらでも高くできるからです。計算上と実用上は全く別の話です。仮に、うちで常用している口径80mmの望遠鏡(焦点距離1200mm)と、実際に所有しているレンズの組合せで同じ計算をすると、(1200÷2.5)×1.6×2×2×3=9216、なんと9216倍も出せてしまいます。525倍や1000倍なんかハナシにもならない、ちょお高性能ですね。もちろんそんな倍率を出す事なんか、将来的にも絶対ありませんが。
(通常用いられる目安としては、実用上での適正倍率は口径mmと同じくらい、極限倍率は、機種や精度にもよりますが、口径mmの1.5〜2倍程度、高精度なもので2.5倍くらいまで。つまり口径80mmなら適正は80倍、限界は160〜200倍が目安です。)

 「星を見たい!」と思っている初心者と、普段から星を見ている天文ファンの間の一番のギャップは、倍率の感覚です。「これから天体望遠鏡を買おうかなと思っている初心者」は、月のクレーターは100倍以上じゃないと見えない、とか、10倍や20倍そこらじゃ肉眼にが生えた程度しか見えない、と思い込んでたりしてませんか?
 単純に考えて、10m先にある10円玉の模様は肉眼では全然見えませんが、1m先にある10円玉なら普通に見えます。「たかが10倍」とは、実はそれくらいの威力があるのです。逆の考え方をすると、倍率7倍程度の双眼鏡も、いざ星空に向けてみると、想像以上にたくさんの星(星雲や星団も)を見ることができます。(空の明るい場所ではイマイチかもしれませんが、そういう場所では天体望遠鏡を使ってもイマイチです。)
 双眼鏡を天体観望に使う、というのは、天文ファンにとってはけっこう普通の事ですが、初心者には「意外」と映るみたいですね。もし、天体望遠鏡は持ってないけど双眼鏡ならある、という場合は、まずその双眼鏡を(空の暗い場所で)星空に向けてみましょう。

 天体望遠鏡を使ってる人は実際に何倍くらいで何を見ているのか、と言うと、かの有名な「アンドロメダ銀河」は、通常20倍位です。月の全景で、20〜40倍、土星の輪が確認できるのは、だいたい40倍前後から。木星の縞模様と4つのガリレオ衛星に至っては、時期を選べば15倍ほどでも実は確認できます。ビックリですね。(むしろ、アンドロメダ銀河は30倍以上に倍率を上げると、視野からはみ出してしまって一部分しか見えなくなり、アンドロメダ銀河のあの形は判別できなくなります。)
 また、天体望遠鏡は、単純に言えば「遠くを大きく見るための巨大なルーペ」であって、「増幅器」などではありません。人の瞳の大きさを最大直径7mmとすると、単純に考えると、口径70mmの望遠鏡は、直径で瞳の10倍なので面積は102倍、つまり肉眼の100倍の光を集める事になります(集光力)。そうすると肉眼では見えない暗い天体も100倍明るく見える!と思いがちですが、ここで望遠鏡の倍率を100倍にセットすると、せっかく100倍集めた光を100倍に引き伸ばすので、当然倍率に応じて暗くなります(面積で考えると100倍の1/10000なので1/100ですね)。もっと倍率を上げていけば、もっと暗くなっていきます。結果、肉眼で見るのと変わらないか、肉眼より暗くなってしまいます。小型で高倍率の望遠鏡や双眼鏡は、集める光が少ないのに無理に引き伸ばしますから、淡い天体が見える訳がありません。商品説明の言葉のトリックに騙されないで下さい。
 通常、星見会メンバーが使用する、200倍以上が扱える天体望遠鏡(セット)は、乗用車が無いと持ち運べない程の大きさ・重さになります。高級な望遠鏡を使っているから、ではなく、高い倍率で暗く淡い天体を見る為には、それだけ多くの光を集め、しかもしっかりした架台に乗せてないとダメなので、必然的にそういう大きさ・重さになるのです。(小学生がお年玉を貯金して買える位の金額のセットも存在します)
 となると、小学校低学年でも小脇に抱えて歩いていける、小型軽量で高倍率な望遠鏡セット一式というのは、普通に考えてもおかしいと気付きませんか?

 天体望遠鏡の中で、一番重要なのは、もちろん望遠鏡本体(鏡筒)ですが、それと同じ位に重要視しておきたいのが、「架台」です。初心者の方には「三脚」と言った方が通じるかもしれませんが。(三脚ではない、柱状のピラー脚というのもありますし、全く考え方の異なるドブソニアン架台ってのもあります。)
 貧弱でユラユラと揺れるハシゴ(脚立)の上に自分が乗ることを想像してみましょう。まともな作業もおぼつかないばかりか、身の危険を感じて怖くて仕方ないでしょう。
 天体望遠鏡にも同じ事が起こります。弱い三脚はふらふらユラユラして、星を見るどころか、まずまともに星を導入する事すらできません。簡単に言えば、1mmのガタ・揺れは、100倍にしたら10cm、300倍では30cm相当になるわけで、画用紙に絵を描くのと米粒に絵を描くの位の比率です。
 小型軽量なカメラ三脚のようなものではなく、建設現場などで使う測量器のようなガッシリとした三脚の上に、これまたガッシリとした経緯台や赤道儀を載せて、そこに鏡筒を取り付けて、初めてまともに見えるようになります。(天体望遠鏡も測量器も、やってる事は似たような物です)
 つまり、うかつな安価な望遠鏡セット一式よりも、まともな架台だけの方が、よっぽど重く大きいのです。

 初心者向けと称しながら使い物にならない望遠鏡の見分け方は、案外簡単です。
●見慣れたカメラ三脚のような架台(実は安物カメラ三脚)である
●カラフルで派手な化粧箱に入って、宣伝文句いっぱい
●宣伝文句に倍率が書いてあって、その倍率が口径mmの2.5倍を
(ちょっとでも)越えている(例:口径50mmなら50×2.5=125倍)
●用途不明な3倍バローレンズや、変に細長い地上用アダプタが付属している
●ディスカウントショップや雑貨店・ドラッグストア・コスメショップなど光学機器とは無縁な店で販売している
●樹脂ボディのMade in CHINA

 2つ当てはまれば十分でしょう。
 実際にどういう物なんだろう、と興味のある方は、ヤ○ーオークションの望遠鏡セットのカテゴリを見てもらえば、上記の例に該当するものがたくさん並んでいます(まともな物も並んでいます)。最近は高倍率表記=ダメな望遠鏡、というイメージが定着し始めた為か、表示されている倍率が控えめなものもありますが、しっかり他の3つに当てはまったりしています。
 最近は「カメラ三脚」が見分けポイントになってきていると気付き始めて、写真ではゴツく見える三脚をセットにする品物も目立ってきました。が、当然、コストダウンは凄まじいので、「買って1日目で首の根元から折れた」というギャグみたいな事態も発生しています。
 ひとまず、「高倍率だから高性能」などと宣伝するフザけた商品とそんな商品説明をする店は、迷わず購入候補から外した方が買い物自体も安全になります。他にも「天体望遠鏡で星座、流星群を見よう」といった、全く知識が無い事がバレバレの宣伝をしている所もあります。ネット通販のみならず、新聞広告や有名所のテレビショッピングでもです。新聞や雑誌で、お金を出してヤラセのヨイショ記事を書かせる、なんていうのも昔からあります。ヘタな知名度に踊らされて、せっかくの予算を粗大ゴミ購入に使わないで下さい。

 前述の「適正倍率は口径mmと同じくらい、極限倍率は口径mmの1.5〜2倍くらい」という目安も、ことダメ望遠鏡には通用しません。そもそも、その目安は「きちんとした素材と精度で組み立てられている望遠鏡」での話で、適当な素材を適当な精度で組み立てた、形だけの天体望遠鏡では、適正で口径mmの0.5倍以下、限界が口径mmの1倍以下というのも珍しい話では無いからです。かろうじて月のクレーターくらいは見えたとしても、土星の輪は何が何やら、といった状態でしょう。

 実際にナシカの「スペースワンダービュ●」という入門機(と称した物)を購入・使用してみましたが、口径50mmで最高倍率225倍などと表記されていても、実際には個人所有のしっかりしたアイピースでテストした50倍で頭打ちでそれ以上は像がボケるだけ、セット付属の場合は20mmアイピースと3×バローレンズを組み合わせて48倍程度になりますが、この組合せでは既に像はボケていて、付属の地上アダプタと称したものは、本当に何の使い道も無い酷いものでした。(ただし、付属20mmアイピース単独使用の倍率15倍では、案外きれいに見えました。もちろんこの倍率で土星の輪は見えませんし、1580円の組立望遠鏡の方が像は綺麗です。)
 ファインダーはいくら調整してもすぐにズレて役に立たず、ドローチューブもガタガタで当然光軸は狂いまくり、付属の三脚も、フラフラユラユラではなく、フニフニヘロヘロガタガタでビックリです。(後ろに写っている、「入門用」のポルタ架台・三脚と比べても、どれだけ貧弱か良く判るでしょう?)

 「形はほとんど同じなんだから安くても性能はたいして変わらないんだろ?」と思っている人は多いですが、玩具店で売られている幼児用の電動乗用カー(ベンツとかレクサスとかニッサンGT-Rとかありますね)を買ってきて、本物のベンツやレクサスやGT-Rと同じように走行できる、なんて考える人はいない筈です。でもなぜか天体望遠鏡では、同じ様に見えると考えてしまう人は多いわけですよ…

 不運にも騙されてしまった場合には、消費者庁の電子情報提供から、景品表示法違反の不当表示優良誤認)を簡単に報告する事ができます。
 メーカー希望価格表示が10万円前後もするのに発売当初から実売2万円前後、などの「あからさまに不自然なディスカウント表示」も、不当な二重価格表示と捉える事もできると思われます。

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