番外編6.初心者でも観測しやすい星雲星団
by StellaNavigator/AstroArts inc.
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〜冬の星空〜


 オリオン座の「オリオン大星雲」は、空が多少暗ければ肉眼で、少し明るくても双眼鏡があれば簡単に見つける事ができる、最も初心者向けの星雲です。
 写真では赤〜ピンクに簡単に写りますが、双眼鏡や望遠鏡で赤やピンクに見るにはかなり空の状態が良くないと難しく、また個人差も大きいので、色を見ることはあまり期待しない方が良いです。一般的には白黒、もしくは緑がかった色に見えます。(人の目の感度が緑で最も高くなるので、緑に見えてしまう、と言ったほうがいいかもしれません。)
 ただ、空の状態が良いとオリオン大星雲(M42、M43)の上の方にNGC1973という星雲も見えますが、これはオリオン大星雲に比べて明らかに青いのはわかります。
 双眼鏡から大口径反射望遠鏡まで楽しめる星雲で、倍率が低くても高くてもそれぞれの見え方がある、生まれたての星が集まっている最も観測しやすい星雲です。



 カシオペア座の「M」の形の半分を「A」に結ぶと、簡単にペルセウス座の二重星団「h−χ」(エイチ・カイ)が見つかります。空が暗ければ肉眼でも、多少明るくても双眼鏡があればボーッと見えています。
 変な名前ですが、これはまだ望遠鏡が発達していなかった頃に、恒星と間違えて恒星の明るい順から通し番号を振られてしまった名残ですが、あまり恒星と間違えそうな感じではない、意外に雄大な星団です。
 それぞれの星団は地球から見ると隣同士に見えるだけで、実際にはかなりの距離で離れています。

 また、カシオペアのこの「A」を作った横棒(「-」)を少し内側に伸ばした所に見える星は、30倍程度以上の低〜中倍率で見ると、あの「E.T.」がバンザイをしてる様な形に見える、通称「E.T.星団」があります。これも正式名称ではなく通称ですが、海外でも通用します。



 カペラを目印に結んだ五角形の星座「ぎょしゃ座」には、M36、M37、M38という双眼鏡で簡単に見つかる星団が3つ並んでいます。天体望遠鏡なら20倍以下くらいの方が面白いでしょう。双眼鏡で見た方が楽しい星団です。


 星座で探すより先に、すばる(プレアデス星団)の方が先に見つかってしまう、おうし座です。
 プレアデス星団は双眼鏡クラスの低倍率で見ないと全体像がわかりません。空の状態が良ければ、星の周りに青く滲んだようなガスが見えます。(レンズの色収差ではない事は他の星と見比べればすぐわかります。)
 おうし座の顔にあたる部分も「ヒアデス星団」という巨大な散開星団になっていますが、これは双眼鏡の低倍率で見ないと訳がわかりません。
 おうし座といえば忘れてはいけないのは角の先付近にある「M1かに星雲」ですが、メシエナンバー1であるにも関わらずなかなか見えにくい難物です。見えるときは8cmの望遠鏡でも見えますが、見えないときは30cmでもなかなか見えません。空の状態(暗さ)に非常に敏感な超新星残骸です。


〜春の星空〜


 春の星空は天の川から外れるので太陽系外の銀河の多い、ある意味「マニアックな」星空になりますが、それらの中で簡単に見つけられて案外見栄えがするのが、かに座の「プレセペ星団」です。
 かに座の甲羅の四角形の中に星団がすっぽりと入った、まさに「毛ガニ」状態です。当然それなりのビッグサイズなので、あまり倍率を上げると星団なのか何なのかわからなくなります。
 空の状態が良ければ良い程、見える星の数も増えて見栄えがします。


〜夏の星空〜


 夏といえば「夏の大三角」ですが、夏の大三角を見つけたら探してみたいのが、はくちょう座のくちばし「アルビレオ」と、こぎつね座にある年老いた恒星の残骸「亜鈴状星雲」です。
 アルビレオは赤い星と青い星の色の対比の綺麗な二重星で、しかも見つけやすくて誰が見てもよくわかるので初心者にはおすすめです。
 アルビレオを見たら、そこから図を参考にすこし望遠鏡を移動させて探してみると、意外に大きく亜鈴状星雲が見つかります。目印がすぐ近くに無いのでサーチする感じになりますが、サーチしてるとスッと視野に入ってきて比較的簡単に見つかります。



 夏の大三角にはこと座もありますが、こと座には有名な「リング星雲」があります。
 ただ、有名な割には小さな惑星状星雲で、倍率を50倍程度に上げて図のように2つの星の間をゆっくり探して、「これかな?」と思ったら倍率を100倍以上に上げて見る、という具合になります。小さくて暗いながらもリング状には見える、見つけやすい割に見逃しやすい恒星の残骸です。
 また「ダブルダブル」という、二重星が更に二重になっている星がありますが、小型の望遠鏡の分解能をチェックするのによく使われる星で、2つまでしか分解できないか、ちゃんと4個に分解できるか、分解しても雪だるまが2つ並んでる感じにしか見えないか、試しに確認してみましょう。



 夏の大三角の隣には、ちょっと曲がった「H」の形が目印のヘルクレス座があります。
 車に踏み潰されたカエルみたいな形の星座ですが、その腰のあたりに全天一とも言われる大きくて見ごたえのある「M13球状星団」があります。
 空がそれなりに暗ければ5cmのファインダーでも見えていたりするので、見つけるのは双眼鏡でも可能ですが球状星団として楽しむには、できるだけ大きな望遠鏡の方が向いています。



 夏の南の空にはご存知さそり座が見えていますが、ここではさそり座の尻尾の先にある「南斗六星」という星の並びを探してみましょう。
 このあたりは天の川銀河の中心付近になり、星雲星団がゴロゴロしています。
 7倍前後の双眼鏡での流し見が非常に面白いエリアですが、中でも目に付くのが「M8干潟星雲」「M20三裂星雲」「M17オメガ星雲」などの密集地帯でしょう。
 空の状態があまり良くないと、星雲でもガスが見えずに星の集まり(星団)としか見えない事もあります。夏は空が暗くなるのも遅く、また湿度が高くて低空に雲や霞が出る事もあるので、空の状態のいい時を狙ってみましょう。


〜秋の星空〜


 秋の星空といえばやはり「アンドロメダ」です。
 明るい星の並びが少ないので、秋の大四辺形からうまく「A」の形を伸ばせる星の並びを探してみましょう。この並びさえ見つけられれば、おそらくアンドロメダ大銀河は肉眼でもボーッと見えている筈です。(逆に言うと、アンドロメダ銀河が肉眼で見えてない時はアンドロメダ座もうまく結べません。)
 この図で示したM32とM33の見え方は、懐中電灯無しでは足元が全く見えないくらいの暗い場所で8cmの屈折望遠鏡で見た時のイメージです。住宅地などからではM33は全く、M32もなんとなく中心だけが繭のようにしか見えないでしょう。


 ここで紹介してるのは初心者向けの星雲星団でも一部のものです。全部紹介してると本一冊が書けてしまうので、「もっといろいろ見てみたい」という時には星雲星団ガイドを用意してトライしましょう。
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