サルには無理でも、小学生ならできるかもしれない、中学生以上なら多分できる、赤道儀ケースの作り方です。
別に赤道儀以外でもいいんですが、形状が複雑なため汎用ケースでは収まりが悪く、専用品はえらく高額だったりする赤道儀の収納ケースが欲しいなー、と思ってる人は少なくないのでは?
車やバイクで運搬はもちろん、保管もスマートにできる、案外お手軽価格でできる赤道儀収納ケースを作ってみましょう。ただし、「自分専用の」と書いてある通り、自分が持っている赤道儀以外には基本的に使えません。同じ機種でも微妙に合わない部分が出ると思います。また「大阪の自宅で作って、長野まで遠征した時に収納しようとしたら入らなくなった」という事も起こり得ます。そのへんは少し頭を使って下さい。
まず形の単純なKenkoのスカイメモRで説明します。
用意するのは、スカイメモが余裕で入るケース(ホームセンターで350〜1200円位?)、発泡ウレタン(1000〜1500円位)、水を入れた霧吹き、シリコンスプレー(250〜500円位)です。ホームセンターの特売日を狙いましょう。
ケースに余裕がある場合、100均で中に入りそうな小物入れも用意しましょう。
ラジオペンチは無くてもいいですが、あると後で楽です。
あと、ビニール袋を用意しましょう。レジ袋でもいいです。(ただし破れていない物←重要)
スカイメモと小物入れを袋に入れて密封します。
特にスカイメモの「下側」部分は、写真のようにピッタリとシワの無いようにセロテープなど駆使して綺麗にまとめて下さい。シワがあると後で苦労します。
小物入れは形が形なので、案外適当でもいいですけど。
収納の仕方の最終チェックをします。
ここで「まぁいいか」で妥協して次に進むと、後々の使い勝手に影響するので、考え直すならこの時までです。
写真では右側スペースが空いてますが、まぁそれは後から。
スカイメモと小物入れを包んだビニール、そしてケースの内側にまんべんなくシリコンスプレーをかけておきます。じゃないと後で苦労が3倍くらいになります。(つまり3倍苦労していいなら、シリコンは無くてもいい)
霧吹きで湿らせて、ブツを配置します。
初めての人には「?」ですが、これ実は非常に重要な作業です。忘れない様に。
発泡ウレタンを注入します。
このサイズだと内容量350gのもので十分足ります。
スカイメモの下側にもちゃんと注入しておきます。
この場合、小物いれを支えにして斜めに入れているのでスカイメモ本体の下に隙間がありますが、普通に寝かせて入れる場合は下に短く切った割り箸や、捨てる予定の単三電池などを入れて浮かせておきましょう。
割り箸はまぁいいですが、乾電池など使う時はそれにもシリコンを塗っておく事を忘れないように。
だいたいこの程度の深さに注入すれば十分です。
厚めに注入する時は、時々霧吹きで湿らせながら重ね注入して下さい。じゃないと悲惨な事になります。
厚く注入しすぎても悲惨な事になるので、念のため下に新聞紙3枚重ねくらい敷いといた方がいいかもしれません。ちなみに水を与えすぎても幸せな結果にはなりません。「湿らせ」程度です。
しばらくすると、こんな状態になってきます。発泡ウレタンすげー、です。
水の与え方や室温でも発泡の仕方が変わってくるので、「どのくらい注入すればどのくらいの大きさに膨らむ」かの予測がしにくいのが難点ですが、入れすぎなければ大概は楽な結果に落ち着くでしょう。
プクプクと膨らんできたウレタンを見ると、ついツンツンしたくなる衝動に駆られますが、ろくな目に遭わないのでやめておきましょう。また、膨らんだ所を潰してしまうと、もう膨らまないので要注意です。
ついでなので、セレストロンのAdvanced VX赤道儀・ウェイト軸・ウェイト・コントローラ類が収納できるケースも作ります。
この赤道儀はスカイメモと違って形が複雑なので、下を浮かせるために乾電池で支えてあります。
基本的な作業はスカイメモと同じですが、発泡ウレタンは1.5缶ほど消費します。
あとは、このまま1日ほど部屋の片隅に放置します。
1日寝かせたものが、こちらになります。万病に効く怪しげなキノコみたいな風体になっています。
与えた水分が適切ならば、1日でほぼ完全に固まっている筈ですが、水を与えなかった・水分が全然足りなかった場合、このキノコの中がデロデロの未発泡・未硬化の、かなり悲惨な状態になっています。それが手や服に付くと瞬間接着剤並に取れなくなるので、本当に悲惨です。
もし赤道儀を包んでいたビニール袋が破れていると、瞬間接着剤級の強度でウレタンが赤道儀に付着して固まっている筈なので、めまいがするほど悲惨です。
発泡したウレタンをちぎりながらスカイメモを「発掘」します。
この時に刃物などを使うと赤道儀に傷を付けやすい上に、残さなければいけないウレタンまでスパッと切れたりするので勧められません。
ここで注意しながら、その瞳に秘められた「直死の魔眼」を使えば、案外簡単にサクッと指(爪)が刺さる所があるので、そこからムシムシとむしり取っていきます。
どーしても指や爪が痛い!とか握力が足りない!とか直視の魔眼なんか無ぇ!って時は、仕方ないのでラジオペンチなどでむしって下さい。
スカイメモの場合は形が単純なので、だいたいこのくらい発掘すればOKです。というか、むしろ掘りすぎないように注意して下さい。
スカイメモと小物入れを取り出しました。発泡ウレタンにスカイメモの型がきれいに取れてます。
ケースとスカイメモが接触していた部分にはウレタンが流れこんでいないので穴になってますが、それほど気にしなくていいです。気になる時は薄いスポンジでも下に敷いてやればいいです(が、実際にはこの穴にはほとんど荷重はかかってません)。
ケースから発泡したウレタンを外しました。
ケースの内側にちゃんとシリコンが塗られていれば比較的簡単に外れる筈ですが、シリコンが薄かったり、何かの使い回しの内側表面が傷だらけのミカン箱なんかを使っていると、張り付いて取れない事があります。その場合は慌てずじわじわと地道に外すか、ケースに入れたまま次の作業をして下さい。
ムシムシむしってきちゃなくなった、余分な所を包丁などで切り落として形を仕上げます。
カッターナイフよりは包丁の方が楽です。面白いようにサクサクと切れるので、ここで「直死の魔眼」ごっこをしてみるのもオツでしょう。
スカイメモの収まり具合を確認します。
クランプやボルトなど状況によって向きが変わる部分は、ここで向きが変わってても収納に支障が無いように形を作っておくと便利です。
赤道儀の形状・重さと置き方によっては取り出しにくい事があるので、赤道儀の下に手を入れられる隙間などをこの段階で作っておくと良いでしょう。
シリコンを洗い落とした後、強力両面テープでウレタンをケース内部に貼り付けて、右側の余分な部分も支障無いレベルに切り落として小物(ここでは取説)を入れられるようにして、小物入れとスカイメモを収納して、完成です。
製作過程的に1ミリの隙間も無い状態でフィットしてるので、見た目以上に保持力は強力です。
蓋をして収納・運搬・輸送OK。
実際には完成直後の段階では発泡ウレタンの隙間にまだ少し霧吹きで吹いた水分が残ってたりするので、蓋をせずに1週間くらい置いとくか、除湿剤や乾燥剤などを入れておきましょう。
安物ケースを買って、蓋がパカパカしてイマイチ持ち運びにくいなーという時には、100均でマジックテープのバンドを買ってきてくるっと巻いとくと良いでしょう。
続いてAdvanced VXも発掘します。
発掘過程はスカイメモと同じで、埋蔵物がこのくらい出てきて、取り出せるようになればOKです。
取り出せない時は、クランプか何かがまだ埋まったままかもしれないので、焦らずに指先で感触を確認しながら作業を進めます。
今回の場合、この発掘作業だけで1時間くらいかけてます。(急いでやろうとすると失敗の元です)
急いでやると指と爪のダメージも大きくなるので、音楽でも聴きながらのんびり作業しましょう。
小物入れの潰れ方を見ても、発泡ウレタンの発泡パワーは意外に強いです。
赤道儀ケースではなく鏡筒ケースをこの方法で作る場合、特にニュートン鏡筒などは鏡筒への力の加わり方を考慮した配置・ウレタン注入を行うなど、鏡筒変形に注意して下さい。
発掘作業が終わってケースからウレタンを外したら、同様に包丁で形を整えていきます。
断面の角を斜めに落としておくと、機材撤収時に収納が楽になるので覚えておくと良いでしょう。
こんな感じに整いました。
スカイメモと違って形が複雑なので、ビニール袋が張っていた部分が隙間になっていますが、肝心の保持力には全く問題はありません。
下部の支えに入れておいた物(今回の場合は乾電池)は忘れずに取り出しておきましょう。傷の原因になっちまいます。
これで完成です。 三脚のアクセサリトレイ用の穴は形状が単純なので包丁でカットして作りました。
ここでありがちなのが、「最初の採寸の段階では大丈夫な筈だったのに、完成したら蓋が閉まらなかった」というトラブルですが、この手のケースの場合、蓋の天板は縁より落ち込んでいる事が多い上に、発泡ウレタンの力で赤道儀が持ち上げられていたりもするので、その場合は諦めて蓋に穴を開けちまいましょう。
どうせ売り物でもオクに出して小遣い稼ぎするでもない「自分専用」なので、使い勝手に問題が無ければ見た目は気にする必要は無いです。
どうしても気になる時は、ステッカーを貼って痛化してみるとか、イルミネーションを付けてみるとかすれば、穴なんかむしろ誰も気づかないでしょう。買い物と硬化放置プレイ時間を除けば、ドイツ式赤道儀ケース1個の場合の実作業時間は2時間から3時間くらいでしょうか。
上記のAdvanced VX赤道儀ケースのように全てを1つに収めると、それはそれで重量がかさむので、本体とウェイト・コントローラ・配線類を分けて別に持ち運べるようにする手もあります。うちのGP赤道儀ケースはオプション機器も多いので2つに分けてあります。また移動時に妙な振動を与えたくない大型の双眼鏡などのケースもこの方法で作れます。
双眼鏡などの場合は、双眼鏡を袋に入れてその外側にウレタンを注入するのではなく、大きめのゴミ袋2つの中にウレタンを注入して、それで双眼鏡を挟んで双眼鏡モナカを作るという方法もあります。(※ビニールはかなり大きめのものを用意しましょう、万が一ウレタンがはみ出してくると阿鼻叫喚です)
興味が湧いたら試してみて下さい。