番外4.太陽黒点や日食の安全な観測 ↑目次
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 今更説明するまでもなく、日食とは、太陽の手前を月がちょうど横切る為に起きる隠蔽現象です。
 月の直径は、地球の1/4ちょい(約1/3.7)で、太陽の直径は地球の約109倍あります。つまり、太陽は月の約400倍ほどの大きさです。
 そして、地球から月までの距離は平均約38万km、太陽までの距離は平均1億4960万kmです。1億4960万kmを1/400すると37.4万kmです。つまり、月の400倍くらいの大きさの太陽が、月の400倍くらい離れた距離にある…地球から見た太陽と月の見かけの大きさはほぼ同じになるわけです。
 ただし、地球は太陽と一定の距離のまま公転しているのではなく、やや偏った公転軌道を描いています。具体的には、毎年お正月の頃に太陽と地球の距離は一番近くなり、毎年7月上旬の頃に一番遠くなります。その距離の差は、地球約400個分にもなります。
 そして、月も地球との距離を一定に保ったまま公転していません。一番近い時で36万km弱、遠いときで40万km強まで離れます。この差は、肉眼で見ていても「何か今日の月は大きい?」と気が付く程です。だいたい 2週間ごとくらいで近づいたり遠ざかったりしてるわけですが、2009年7月22日の「今世紀最大の日食」と言われたトカラ列島の皆既日食は、太陽が最も遠い7月で、そして月と地球の距離は35万7500kmまで近付いた日でした。
 なので、月の見かけの大きさは太陽より一回り大きく、その分、広範囲・長時間、太陽をスッポリ隠したわけです。

 じゃあ、月が遠い時にはどうなるの?というと、2012年5月21日、月の距離が40万5900kmまで離れた状態で、日本列島太平洋側で日食が起きます。

宮崎市役所基準での食の推移
時刻6:13'01"6:206:306:406:507:007:107:207:20'08"7:23'00"7:25'02"7:307:407:508:008:108:208:308:408:44
食分0%10.1%24.5%38.7%52.6%66.3%79.7%92.8%93.8%95.7%93.8%87.8%75.2%62.9%50.7%38.8%27.1%15.6%4.4%0%

 これは、地球と月の距離が遠いため、月の見かけの大きさが太陽より一回り小さくなり、隠し切れない太陽が周囲にはみ出してドーナツ状に見える「金環食」と呼ばれるものです。

 皆既日食も金環食も、うまく月−太陽が一直線に並んで見える狭い範囲でしか観測できない物で、そこから少し離れた場所では、月と太陽がややズレるので、部分日食で終わります。(もっとズレると、太陽も何も欠けない、ただの新月になります。)

 月−太陽が一直線に並んで見える場所が、必ず昼間であるとは限りません。朝、日食状態の太陽が昇ってきたり(日出帯食)、夕方、日食状態の太陽が沈んでいく(日没帯食もしくは日入帯食)エリアも当然あります。
 2010年1月15日には、この日没帯食になりました。沈んでいく太陽で多少は光量は抑えられましたが、フィルター無しで終始観察するのはやはり危険です。

宮崎市役所基準での食の推移
時刻16:47'19"16:5016:5517:0017:0517:1017:1517:2017:2517:3017:32'28"
食分0%3.2%9.3%15.3%21.4%27.5%33.6%39.6%45.6%51.4%54.2%

 なぜ、太陽が月の約400倍の大きさで、約400倍離れていて、皆既日食みたいな現象が起きるのか、と言えば、ひとえに「ただの偶然」です。
 実際、かなり大昔(恐竜がいたり、まだその前とか)だと月は今より遥かに地球の近くを回っていたので、太陽に比べて月はかなり大きく見えていた筈です。皆既日食になったらなったで、今のようにコロナも見えず、本当に太陽が消えていたかもしれません。
 また、現在、月は年間3.8cmずつ離れ続けています。遥か未来には、月はどうがんばっても太陽を隠しきれず、金環食か部分日食しか起きなくなってしまうでしょう。


【日食と太陽黒点の各種方法】

astro solar filter glass
2009年7月22日シーガイア日食観測会にて、上の写真の日食グラスを紐を外して無断で持ち帰った方は、必ず返却して下さい。
 2009年7月の日食の時には、人によっては半分パニック(苦笑)になりながら売っている店を探した事と思いますが、日食や太陽黒点、つまり太陽を観測するには、「日食グラス」「太陽フィルター」「黒点メガネ」等と呼ばれる物を使用するのが手軽で一般的です。(日食など太陽関連の天文現象が起きるのがわかっている時は、その2週間以上前、できれば1ヶ月以上前には購入を済ませて下さい。2週間以上前ならショップは品切れしても追加発注する余裕がありますが、2週間を切ると、発注しても当日には間に合わない、なのでそのまま販売終了、となる事が多々あります。)

 現在の太陽観測フィルターは、アルミなどの金属を蒸着させたフィルムや、金属を混ぜたガラスを使用しています。これらは、太陽の光を肉眼で見ても安全な量だけ透過させ、紫外線や赤外線など目に障害を及ぼす原因になる光も安全値まで減光・遮断する設計になっています。(眼視観測用と、写真撮影用で別になっている製品もあります、撮影用は眼視には使えません。)
 太陽を見る為のフィルターは、ただ暗く見えればいいという物ではなく、材料が少々特殊ですので、安易に身の回りの”暗く見えそうな物”を代用品として使うのは危険です(※後述)

 日食メガネとして販売されている物の他、自作用の材料として販売されているソーラーフィルターもあります。学校単位・クラス単位で用意する場合は、材料で買って作るとかなりお安く済みます。
 日食グラス・太陽メガネの自作をする場合には、天文ハウスTOMITA(長崎市)のサイトから、太陽観測メガネ(日食メガネ)の作り方とB4サイズの図面のダウンロード、ソーラーフィルターの購入ができて便利です。日食メガネの材料は基本的に、このフィルターをラミネート加工した物と、台紙(プリンタで図面を印刷した紙)、両面テープ、のり、だけです。

 少数作成、あるいは必要数をその都度作成する為の、一人用の太陽メガネ用台紙ファイルも用意しました。材料は、ソーラーフィルター、図面を印刷したハガキ用紙(横向き絵はがきとか、いい感じになります)、両面テープ、糊です。うまくポイントを押さえれば、セロテープだけでも作れます。
ハガキサイズ太陽メガネ ★ハガキサイズ太陽メガネ印刷原稿【PDF形式・原稿サイズ100×148mmハガキ】
※表示・印刷には、Adobe ReaderなどのPDFビュアーが必要です。

★ハガキサイズ太陽メガネ印刷原稿【PSD形式】
※表示・印刷には、PhotoshopもしくはPSD形式の表示・印刷ができる画像ビュアーが必要です。

1.市販のプリンタ用ハガキ用紙や不要なハガキなどに必要部数をプリントアウトします。絵はがきを使う場合は宛て名面に印刷して下さい。
2.ソーラーフィルターを幅10cmに切ります。(A4タイプなら縦半分です。大判タイプの場合は50cm÷5列できます。)
3.切ったフィルターを1枚ずつ、ラミネートフィルムでラミネートします。多少、気泡やシワが入っても、「太陽メガネ」としての使用にはさほど支障ありません。(穴や破れはダメです
4.フィルターの左右にできたラミネートの透明部分を、1cmほど残して切り捨てます。
5.ラミネート済みソーラーフィルターを、幅1〜1.2cmの短冊状に切り分けます。使う刃物はローラーカッターなどがいいでしょう。
6.あとは用紙の説明に従って工作して下さい。(※窓を切り抜く前に、先に台紙を折り曲げておいて下さい。切ってから曲げると歪みます。)
※ラミネーターが無い場合は、ソーラーフィルターを幅1.5〜2cmくらいのやや幅広の短冊状に切り分けて、鼻にあたる位置に縦にセロテープを貼って左右・中央の3箇所で台紙に留めれば必要な強度は出ると思います。糊は液状の物よりスティック状の物もしくは両面テープの方が綺麗に完成します。
 実際の製作風景は、天文ハウスTOMITAブログに掲載されているので、参考にしてみて下さい。
 顔に向ける面は黒く塗りつぶしておくと、目の疲れが少なくなります。

 どうしても太陽メガネ用フィルムが入手できなかった場合には、ホームセンターや工具店などで販売されている溶接作業用の保護面に使う色ガラス(遮光ガラス・ウェルディングプレート)のJIS規格品#8を2枚重ねるなどして使用して下さい。#8が1枚では全然足りません。#10が2枚だと暗くなりすぎる様です。1枚の場合、#13ならホームセンターに売っていますが、できれば#14が欲しい所です。ほとんど取り寄せになると思いますが。
(JIS規格を元に具体的な計算値で示すと、#8を2枚重ねした場合の透過量は、313nmの紫外線で0.0000000009%、365nmの紫外線で0.00000169%、可視光で0.0001%、780〜1300nmの近赤外線で0.001849%、1300〜200nmの中赤外線で0.004624%、という最近の太陽観測用フィルターに非常に近い値になります。撮影専用の場合は#9を1枚の可視光0.037%や#10を1枚の0.0139%と、明るく設定した方がいいでしょう。)
 ただ、ガラスなので「落とすと割れる」「重い」「デカい」「邪魔」ってのはありますので、まぁあくまで代替手段だと思って下さい。

 これら日食グラス・太陽メガネで太陽を見ると、太陽というより月の様に見えると思います。そして、大き目の黒点(大きさによっては望遠鏡で拡大しなくても見えるので『肉眼黒点』と呼ばれます)があれば、「え?フィルターにゴミが付いてる?」って感じでポツポツと見えます。
 黒点は太陽表面の磁場のねじれ(太陽は地球みたいな固い塊ではないので、太陽自身が自転でねじれて、結果、磁場のねじれが生じたりします)によって発生する、言い換えると「エネルギーが封じ込まれてる場所」で、太陽表面温度(約5500℃)より低い、2000〜3500℃くらいです。エネルギーが封じ込まれてる分、当然暗く見えますが、黒点の周囲には、何も無い表面よりも白く明るく見える白斑が見えている事があります。普通に見ると白いだけですが、専用機材で観測すると、爆発現象(太陽フレア)が起きているのが見えたりします。
 この太陽フレアが曲者で、規模が大きくなると、大量の放射線や電子、電磁衝撃波などを地球に及ぼし、わかりやすい所ではオーロラが発生したり、酷くなると人工衛星が故障したり電波障害が発生したり、ヘタをすると地上の変電所が壊れて大停電を起こしたりします。
 黒点というのは、一見地味な天文現象ですが、実は地球に直接影響を及ぼすけっこう派手な天文現象でもあります。前述のように、太陽の直径は地球の約109倍ですから、そこから換算すれば、肉眼で見える黒点がどれだけバカでかい物か想像できるでしょう。


solar filter & 66SD  アストロソーラーフィルターは、本来は右の写真の様に天体望遠鏡の対物側に被せて使う物です。ソーラーフィルターと「ミラータイプのカーフィルム」とは全然違いますので、似たようなもんだろうと思ってこんな風に使うと、普通に目が焼けます。(アルミ箔を使うと、当然何も見えません。)
 太陽メガネと違って、この(本来の)使い方の場合には、ラミネートして強度を上げる、という事はできません。運搬・保管の際には、サイズの合いそうなタッパーなどに入れると良いでしょう。多少指紋が付いても見えにはほとんど影響しません。

 金属蒸着ガラスフィルターは望遠鏡に取り付けて使う為に設計・加工されている物で、継続的に太陽黒点などを観測する人向けです。日食などの単体イベントで買うには高価すぎなので、目的に合わせて選んで下さい。
 アストロソーラーフィルターを通した太陽は、こんな感じで白っぽい球に見えます。(黒点や白斑、粒状班の観測もしやすいです。)
 このフィルターではコロナもプロミネンスも見えないので間違わないで下さい。皆既日食の時以外でプロミネンスを見るにはHα太陽フィルター(めちゃ高額)やHα太陽望遠鏡(これも高額)が必要です。


太陽投影法  太陽観測の方法として、昔から最もポピュラー&オーソドックスで、かつ安全と思われる手法は、天体望遠鏡などを使用して、白い板に投影された太陽像を間接的に観察する太陽投影法です。(※Vixenの太陽投影板AセットはA80Mf専用と書いてありますが、36.4ネジのドローチューブには汎用で使用可能です。)
 正しい観察方法を行えば、大勢で一度に観察できて、ペンなどで指し示しながら、あるいは投影板の上に置いた紙に投影し、そこに直接データを記入しながら説明もできます。もちろん黒点があれば直接鉛筆でなぞって記録を残せます。間接観測なので、接眼部に手をかざしたりとかしなければ基本的に身に危険が及ぶ恐れはありません。(それでも長時間、直射日光下で観察を続ければ普通に目が疲れます、UVカットのサングラスやメガネなどを使用しましょう。望遠鏡の口径は8cm以下が目安です。接眼部が樹脂製の安価な望遠鏡を使うと熱で溶けます、注意してください。)

 小学生(あるいは幼児、たまに中学生)に投影法で太陽を見せていると、目を離した一瞬の隙に、直接望遠鏡を覗き込もうとする子がいつも出ます観測指導者は、望遠鏡操作と人員整理の、最低2名つけて下さい。集めた太陽光線がどれほど危険なものか説明する為に、観測を始める前に、望遠鏡で集めた太陽光がどれだけ熱いか体験させた方が良いかもしれません。また投影版の周囲にクリア板や紐などを使ってガードを作る、注意事項を先に周知させておくなど予防策を取っておいた方が良いでしょう。

 長時間の観測の場合は、接眼部が想像以上に熱を持ちますので、定期的に望遠鏡の先にキャップをしたり帽子などを被せて冷ましたり、口径を必要最小限に絞る(キャップに絞りが付いてる場合はそれを、無ければ厚紙などで自作を)などが必要です。太陽観測経験者ならみんな覚えがあるでしょうが、光学ファインダーは忘れずにキャップをするか、ファインダー自体取り外して、ファインダーから出てきた光で火傷をしない様に注意して下さい。

 投影法は基本的に反射系の望遠鏡では行えません、屈折望遠鏡を使って下さい。(ソーラーフィルタ使用の直視観測は反射系でも可能です。)宙のまにまに」でも蒼栄高校天文部がやっていましたが、簡易的になら、双眼鏡の片方を使用して手持ちの紙に投影する、などもできます。そのかわり、双眼鏡は内部が複雑&精密なので、熱を持たせないように短時間使用して冷ますなど工夫して下さい。


pst and astro solar filter  太陽を構成する主要元素である水素特有の光スペクトルのうち、赤い光(Hα輝線)だけを観測する為に設計されたHα太陽望遠鏡という物もありますが、日食などだけを観察するにはあまりにも高価なので、「もし、周囲に持ってる人がいれば」覗かせてもらいましょう。
 Hα太陽望遠鏡で見る太陽は、こんな感じに赤く、淵のプロミネンスやフレア、表面のフィラメントなどが観察できます。Hαで見る黒点は、黒ではなく白く、かつ大きくダイナミックです。プロミネンスは思っているよりも意外に淡く(モノにもよりますが)、また空気の透明度にかなり敏感です。空気の澄んだ晴れの日、ガス星雲を見るような感じで観察すると確認しやすいです。頭から鏡筒まですっぽり黒い布を被せるとか、手でアイピースと目の間に覆いを作って周囲からの光を遮断すると、よりよくわかります。(Hα望遠鏡でもコロナは見えません。)
 同じような製品に、カルシウムのスペクトル輝線を観測するCaK太陽望遠鏡もありますが、こちらは紫外線に近い青で、人によって肉眼では全然見えなかったりするので、「デジカメ・CCDでの撮影用」と考えた方が良いとの事です。

 昔は、アイピースに濃い色の「サングラス」と呼ばれる減光フィルターを取り付け、対物側を絞って光量を抑えて観測する方法が、投影法と共に一般的でしたが、現在この方法はほとんど用いられていません。長時間観測の熱に耐えられずサングラスが突然割れて、失明の危険性が高いとされたからです。現在はサングラス自体、中古で稀に見る程度で、新品では原則販売されていません。(売ってる所もありますが)
 一方、自作マニアの中ではトライしている人も時々いる、反射望遠鏡の鏡をメッキをしない状態で使う太陽望遠鏡、というのもあります。いわば「鏡の反射」ではなく「ガラスの反射」の光量だけで太陽観測を行おうという物ですが、鏡のメッキを剥がせばOKという物ではないので(更に減光オプションが必要です)、ひとまず豆知識的に「そういう物もある」程度に憶えておきましょう。


 さて、次に日本で見える日食は、最初に書いた通り、2012年5月21日の金環食です。(次の皆既日食は2035年9月2日です。)日食というのは、おそらく唯一の「空を見上げるより地面(2012年は壁?)を見た方が面白い天文現象」と言えるでしょう。どうがんばっても日食の時にしか体験できない現象が、とにかくあちこちで(簡単に)観察できます。
 一番のお手軽観察は、「ピンホール投影」と「木漏れ日」です。

 手近な厚めの紙(厚紙でもダンボールでも)に、ニードルやボールペン類を使って、プスプスといくつか穴を開けます。
 この穴を通して地面などに漏れた光は、日食の時には欠けた太陽と同じ形になります。ピンホールカメラと同じ原理で、太陽も(見かけ上は月と同じ大きさの)面積体ですから、針穴(ピンホール)をくぐってきた光は、点対称(天体ショーではありません)に地面などに逆さまに投影されます。点対称ですから、針穴は小さい方が像はくっきりします。しかし反面、穴を通る光の量は少なくなるので像は暗くなります。穴の大きさは大きくても鉛筆程度の方がやりやすいでしょう。(欲張って大きい穴にすると失敗します。)
 具体的にどんな感じ?と思った人は、そのへんのゴミ紙などにボールペンの先で小さい穴を開けて、室内で照明の光を机の上にでも投影してみましょう。天井にある蛍光灯がそのままの形で投影される筈です。暗い室内から昼間の窓に向ければ、窓から見える景色も投影できるでしょう。針穴が大きいと、像がくっきりする距離が長くなります(が像は大きいです)。針穴が小さければ短くて済みます(が像は小さいです)。
 特に道具を使わなくても、地面に映る木漏れ日や、自分の重ねた手のひらから漏れる光を地面に映して見るだけでも可能です。いろいろ大きさを変えたり、盛れる光の数(指の隙間)を増やしたりして遊んでみて下さい。案外形はよくわかります。

 似た方法に、手近にある手鏡を使って、太陽光を壁面に反射投影するお手軽投影法もあります。
 そのへんにある手鏡でいいので、物は試しで実験してみましょう。
1.一辺が1〜2cmの正三角形を紙に描いて、切り抜く
2.三角形の穴のあいた紙を、手鏡に貼り付ける(被せるだけでもよい)
3.これで、10m位離れた壁に、太陽光を反射させてみる

 反射した光は、壁にどう映ったでしょう?
 普通に考えれば「三角形の光が映る」ですが、実は、まんま太陽の形に、キレイな○に映ります。日食が始まれば、欠けた形になっていきます。なぜそうなるのか、は、やはりピンホールカメラと同じ理屈です。(鏡の径より、投影された光の径は大きくなっている筈です。)
 カメラ三脚などにこの手鏡をうまく固定して、観察しやすい位置に反射光が来るようにすれば、即、日食観察は始められます。(反射した太陽像が動いていく日周運動の説明も可能です。)
 ある程度滑らかな、色が無地の壁がいいですが、無ければ段ボールでも何でも使って滑らかな壁をこしらえて下さい。
 本来、別に穴を三角形にする必要はありませんが、丸い穴だと、その穴の形が映っていると思われがちなので、あえて三角形にしています。正方形でも丸でも構いません。逆に、日食の時にはまん丸の鏡を使っても三日月状に投影されるので、けっこう不思議がられる筈です
手鏡を、覆いをせずにそのまま使っても、投影する壁との距離があれば、きちんと形は浮かぶ筈ですが、鏡のサイズによってその距離は違ってくるので、事前に試してみて下さい。鏡が大きくなると、像の輪郭もボケてきます。三角形の場合、1辺2cm以下、丸なら直径2cm程度で壁から10m程度離れれば像は十分クッキリします。10cm角の手鏡なら、50〜100m離れると、キレイな○になって、大勢で観察するのにも適した大きさになります。逆に鏡を小さくすれば、像は小さくなりますが、壁までの距離が近くても十分クッキリになります。

 これらの方法の場合、「じゃあ、金環食の時はどうなるの?」と変な疑問も湧いてくると思いますが、当然、ドーナツ状になる筈です。真偽の程は、2012年5月21日早朝に確認してみて下さい。


【太陽観測の注意事項】

 昔は、真っ黒い下敷きや黒いビニールごみ袋を使うとかいう方法がよく紹介されていましたが、現在はこの方法では、『可視光は暗くなっても赤外線などは遮断できず危険である』と判明しているので、日食観測には使わないで下さい。(熱心に観察しようとすればする程、目に障害が出る危険は増します。)目を細めるだけとか、もちろん「我慢して直視する」なども絶対止めて下さい。
日食性網膜炎(日食網膜症とも言う)などの障害が残る恐れがあります。(※ポルトガル語ですが、こちらに実際に日食で網膜炎を起こした眼の眼底写真があります。)
 特に「日食だから」起きる障害ではありませんが、日食が起きる度に世界中地域を問わず症例が報告されるので、この名が付いています。太陽を無理して直視し続けた為に熱(赤外線)で網膜神経細胞が焼け死んだ状態に陥る炎症(つまり網膜の日焼け)で、死んだ網膜細胞は皮膚の日焼けの様に修復できません(=失明)。
 人間の網膜神経には熱や痛みを感じる能力は無い(つまり気付いた時には失明している)ので、一層の注意が必要です。
子供は特に太陽を直視・注視しやすいので、気をつけて下さい。

 「子供の頃は黒い下敷きで昔見てたけど、まだ失明なんかしてない、だから大丈夫だ」などと無責任に言っちゃってる人をあちこちで見かけますが、実際に目に障害が出た人はみんな「大丈夫だと思っていた人」ですので、安全を優先するなら変なチャレンジはやめて下さい。危険だと解かっていてチャレンジする場合は、あくまで自分1人で、自己責任でやって下さい。
 「数秒なら大丈夫」とか、「危険なのは数分以上見た場合」とか、全く根拠の無い安全基準を勝手に作り出して天文初心者にデタラメを吹き込むのも、そういうデタラメを「安上がりだから」程度の理由で信用するのも絶対にしてはいけません。

 多くの場合で「目(や肌)に有害」とされる紫外線(UV)は、主に目(や肌)の表面近くにダメージを与えます。なので、比較的頻繁に紫外線ダメージを体感するシーンに出くわします。目がヒリヒリしたり、肌が日焼けしたりと。
 一方、太陽を直接見たりする時に「危険」とされる赤外線(IR、熱線)は、眼球の内部にダメージを与えます。そう頻繁に、強力な赤外線源を注視するような、そんなシチュエーションに出くわす事もないので、ほとんど知られていませんが、その『そんなシチュエーション』こそが、まさに『日食』なので、新聞、テレビ、ネットなどで何度も何度も「日食グラスで見て」と報道されているのです。宣伝ではなく、危険回避のための勧告だと認識して下さい。

 プレパラートにロウソクのススを付けて使うという方法も理科の実験としてはポピュラーですが、ススもけっこうびっちり付けないといけないのに、最近売られているロウソクは不純物が少なくてススが出ない、という根本的問題がありますので、観測手段からは外しておいて下さい。

 太陽の光を弱くする物=サングラス、という訳で、ディスカウントショップやダイソーでサングラスを複数買ってきて、レンズを重ねて減光しようとしている人もいる様ですが、上記の通り、赤外線は考慮されていませんから、「紫外線(UV)99%カット」とかいう表記は赤外線とは全くの別問題と認識して、変な事はやめて下さい。
 UV99%カットのウィンドウ用フィルムやカーフィルムを重ねて使おうとしている方もいますが、赤外線も含めて安全レベルになるまで重ねると、太陽も見えなくなると思います。早い話が、使い物になりません。

 見た目は似ていますが、「ポテトチップスの袋(の裏)」「ミラータイプのカーウィンドウフィルム」では透過率が比較にならない程高すぎて、太陽を観察するのには使えません。(夕日は見えるぞ、と反論してる頭の悪い人もよくいますが、そこまで反論するなら自分1人だけで自己責任でやってくれ、と。)
 他に、「ガラスに反射させて見る」「水面に反射した太陽を見る」というのも昔はあったと思いますが、直視に比べれば弱いものの、まだまだそのまま肉眼で見るには強いです。他の代用フィルターと組みあわせば何とかなる可能性もありますが、あいにく検証データはありません。(安全かもしれないし、危険かもしれません。)君子危うきに近寄らず、で、今回はパスした方が無難です。目に障害が出た後に「実はアウトでした」ではシャレになりませんので。

 防災用のレスキューシート(銀色のアルミ蒸着フィルム)が、構造的には太陽観測フィルムにかなり近いですが、元々「透かして使う」という事を考えていないので(むしろ逆)、像質はかなり悪いです。1枚だけでは全くの危険レベルです。2枚から3枚(製品によっては4枚)重ねて使用する事で、おそらく理論上は安全レベルまで減光できると思われますが、安全性も見える像も保障しません。(毛布の様に使う強度優先の設計なので、欠けた太陽の形が見えるかどうかも怪しい像になるかもしれません。)

 モノクロフィルムの黒い部分(完全に感光した部分)を通して見るという方法もよく紹介されますが、これは注意が必要です。
 昔のモノクロフィルム(と現在の一部のモノクロフィルム)は、感光してフィルムに定着した銀粒子の密集度で(いわば砂絵の様に)画像の濃淡を記録していたので、完全に感光した部分は金属蒸着フィルムに近い性質が期待できましたが、現像工程がカラーフィルムと異なる為、最近のDPE店では現像できる所がほとんどありません(現像センターに回します)。そこで最近では、DPE店でも(カラーフィルムとほぼ同じ工程で)現像・焼き付けができる、色素系のいわば「白黒カラーフィルム」が増えてきています。しかしこれは現像後に銀粒子は残らないので、太陽観測には使えません。どうしても使う場合には、どっちのタイプのフィルムなのか、買う前にしっかり調べておく必要があります。
 色素系のフィルム(ポジもネガも)の赤外線遮断能力は、ほぼゼロ、見事なまでに素通しです。

 本物の銀粒子のフィルムの場合、通常は2枚重ねで使用しますが、フィルムの銘柄によって厚み・濃さが異なり、太陽観測における赤外線透過率のテスト結果も無いので、安全の保証はしません。(レントゲン写真は厚みがあって透過率は問題無いらしいですが、逆に厚すぎて像はあまり良くないという話もあります。)
 往々にして、「銀粒子が残る白黒フィルムなら使える」と解説しても、肝心な部分が抜け落ちて「白黒フィルムなら使えるらしい」と思い込んで、色素系白黒フィルムを使ったりする事が多いので、自信が無い場合はいっそのこと「写真用フィルムは使わない!」にした方が安全かと思います。

 ここまで説明して気付いた人もいるかもしれませんが、太陽観測において安全レベルまで太陽光を減衰できる性能を持つフィルターは、材料に「金属」を使用しています。アルミ蒸着だったり、銀粒子だったり、バナジウム酸化物を混ぜ込んだガラスだったり…。色素・染料によって光を暗く見せている物(黒い下敷き、ウィンドウフィルムなど)は、赤外線にとっては透明です。
 最近ニュースで誰かが逮捕されたりして車で護送されたり、といった時に、車内の容疑者の映像が全体に緑で映っている事がありますね。これは、一見真っ黒のウィンドウフィルムの車内に容疑者がいるんですが、ビデオカメラのナイトショット機能などを使った赤外線では、すっぱりと撮影できているのです。要するに、赤外線にとっては、てんで意味の無い「黒」という事です。

 具体的なフィルムの銘柄を交えた各種フィルターの透過率の実測データは、天文教育普及研究会の日食情報・「太陽観察用各種フィルタ類およびその代用品の透過率測定」を参考にして下さい。

 また、現在の太陽観測における安全性の基準として用いられている論文(の和訳)も転載しておきますので、興味のある方は参考にして下さい。


【赤外線が怖いワケ】

 まず、「光」というのは、電磁波(つまり電波)と同一です。光子という素粒子でもあり、電磁波という波でもあります。(あまり詳しい事は量子物理学な世界の話になるので割愛。)どこで「光」と「電波」の認識が分かれるかと言えば、だいたいは『波長』(つまり周波数)です。
 普通に流れているAMラジオ、だいたい1000KHz(1MHz)位だと、波長は約300mになります。(光が1秒間に進む距離÷電磁波が1秒間に振幅する回数つまり周波数=波長、なので、この場合、30万km÷1000KHz=300,000,000m÷1,000,000=300m)電子レンジなどは約2.4GHz(2400MHz)なので、波長は約12.5cmです。
 光はというと、波長が380nm(ナノメートル)以下(=波長が短い)なら紫外線、700nm以上(=波長が長い)なら赤外線、という具合になっています。つまり可視光は、380nm〜700nmの案外狭い範囲だけ、という事です。(可視光の領域はけっこう個人差があります。)

 さて、前述の通り、光と電波は同じものです。
 目の前に紙一枚置けば、もう紙の向こうは見えませんが、電波はそこに何も無いかの様に透過していきます。AMラジオを紙で包んだところで感度はほとんど変化しません。手で遮っても、目立った変化はありません。(内蔵のバーアンテナの向きで感度が変わるのはこの理屈ではないので、間違えない様に。)
 しかし、もっと周波数の高いFMラジオだとどうでしょう?FMラジオはだいたい100MHzくらいですが、小型の(アンテナの小さい)ラジオだと、人の体の位置によって受信強度が変化します。また、周波数の高い電波は直進性が強いので、「あそこではうまく受信できないけど、こっちまで移動するときれいに受信できる」という事があったりします。470〜770MHzのワンセグが、屋内や物影では数cmで受信状態が激変したりしますね。

 波長が短いと簡単に遮断されたり反射されてしまい、波長が長いと、ちょっとやそっとの物では遮断されなくなるという、電波の性質ですが、当然、光にも同じ性質があります。
 つまり、どういう事かというと。
 可視光が遮断される様な状況なら、(特殊な素材でもなければ)波長の短い紫外線もほとんど遮断されていると判断できますが、実は波長の長い赤外線は遮断されずに通過してきている可能性がある、という事です。
 夏、晴天時に黒いコウモリ傘などを差して日なたに立ってみると、日光はほとんど遮断されて影になっている筈なのに、頭上からカッカッと熱を感じるでしょう。まさしく赤外線が通過してきてしまっている状況です。黒い下敷きやポテチの銀の袋を通した太陽が赤く見えるのも、おそらく同じ理由でしょう。(下敷きを黒く見せるのに赤い色素を使ってる可能性も無くはないですが…)
 それでなくとも、日食観測の場合、可視光を全部遮断したら全く観測にならないので、ある程度は透けて見える程度の素材を使う必要がある訳ですが、うかつな素材なら、赤外線にとっては透明同然である事もあります。(カメラ用NDフィルターやカラー写真フィルムがそんな感じです。)

 皮膚なら、熱ければ「熱い」と感じるので、赤外線が通過してきてしまってる事はわかりますが、人間の網膜神経細胞には熱や痛みを感じる機能はありません。(純粋に可視光への刺激にしか反応しません。)
 例えば、ビデオカメラなどに「ナイトショット」という、赤外線LEDを照明にして暗闇でも撮影できる機能が付いていたりしますが、これでまっ暗闇で人の顔を撮影すると、人の目は赤外線に対して「まぶしい」とは感じないので、瞳孔は思い切り開いたままで、瞳孔から入って眼球内を通った赤外線が網膜で反射してまた瞳孔から出てきて、夜中の犬や猫みたいに眼がギラギラと光って写る事がよくあります。
 せいぜい数m届く程度のパワーしかない赤外線LEDから出る近赤外線ならなんという事はありませんが、太陽光のエネルギーはそんな甘いものではありません。
 ヘタに減光してしまっていると、普通に太陽を直視するよりも生半可に瞳孔が開いてしまうので、余計に赤外線を網膜細胞に導いてしまいます。中途半端に暗く見える、赤外線遮断能力の無いフィルターの怖さは、ここにあります。

 一方、普段日焼けを起こす原因になってる紫外線は、というと、紫外線は赤外線に比べて遮断する事自体は案外簡単です。普通のガラスを通しただけでも、既にけっこう遮断されています。車のウィンドウや家の窓に貼る為の、ほとんど透明のUV99%カットフィルムってのも売ってます。
 しかも紫外線による日焼けは、(紫外線自体に深く入り込む性質が無いので)せいぜい皮膚の表面部分しか焼けていません。「強火でサッとあぶった」状態と言えば分かりやすいかもしれません。(それでも水脹れができそうな位の日焼けを全身にすれば、十分病院行きですが。)これがもし赤外線の仕業なら、皮膚どころか肉・内臓まで焼けちゃって、全国の夏の海水浴場は屍累々でしょう。
 紫外線は眼球の中の水晶体を通過して網膜に届く頃にはかなり減衰されている筈ですが、目の入り口にあたる角膜などにはけっこう簡単にダメージが来るので(目がヒリヒリしたり、赤くなったり、酷くなると痛くて目が開けられなくなったり)、炎天下での長時間の観測の場合には、サングラス(あまり色の濃すぎない、紫外線カットがしっかりしている、レンズに変な歪みの無いもの)あるいはUVカットレンズのメガネを着用する事をお勧めします。(これが酷くなると、焼き魚の目が白くなってるのと同じ様に、透明である筈の目のレンズが白く変質して白内障になります。)

 余談ですが、テレビなどで時々、溶鉱炉や焼却炉で働いている人が、炉の中の様子を見るのに覗き窓から覗いているシーンを見る事があります。
 普通に考えれば、この人たちは日常的に、かなり大量の赤外線を目に受けている事になりますが、大丈夫なんでしょうか?
 実は、「熱線吸収フィルター」、言い換えると「赤外線遮断フィルター」という物があって、可視光にはほとんど影響しないけど、可視光以外の光・赤外線はスッパリと遮断する、という特殊なフィルターがちゃんとあるのです。HOYAから市販されています。比較的高価です。)身近な所では、そのままでは強力な光源からの光がかなり熱を持ってしまう、OHPや液晶プロジェクタに内蔵されています。昔はそんなフィルターが無かったので、映写フィルムなどがひっかかると、よくフィルムが焼けたり溶けたりしてましたね。
 もちろん、これを太陽メガネに応用する事もできますが、現在市販されている「まともな」太陽メガネなら、ほぼ対策済みなので、わざわざ個人でこれを買う必要はありません。
 但し、天体望遠鏡にフィルターを取り付けて観測する場合(特に太陽が黄色〜オレンジっぽく見えるガラス蒸着フィルター)には、このフィルターを併用する事が望ましいです。フィルターサイズに丸くカットして、適当なフィルター枠にはめこんで、普通のフィルターの様にアイピースに装着して使用します。

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